
立憲民主党が内閣不信任案の提出を見送ったことで参議院選挙は7月3日公示、7月20日投開票日とする日程がほぼ確定したと報じられている。InFactは既に選挙に関係する情報についてファクトチェックに取り組んでいるが、れいわ新選組と日本共産党を党首討論から「わざわざ外した」とするXの投稿が拡散している。これは本当なのかファクトチェックした。
対象言説
「れいわと共産をわざわざ外した党首討論/茶番でしかないわ/国民のための党首討論にならへん]
Xの投稿(2025年4月18日)
判定結果
れいわ新選組、日本共産党ともに党首討論への参加条件を満たしていなかったために参加できなかったもので、Xにある「わざわざ外した」ということではなない。
ファクトチェックの詳細
Xの投稿は、5月31日時点で17万が表示され4000を超える「いいね」、1820ものリポストが行われるなど拡散している。この発信が2025年4月18日であることから、同年4月23日の国会での党首討論の概要が発表されたことを受けての指摘と見られる。この時、立憲民主党の野田代表、日本維新の会の前原代表、国民民主党の玉木代表が出て自民党総裁の石破首相と討論を行っている。

また、5月21日、6月11日も党首討論が開かれ、何れも同じ顔ぶれで行われている。つまり、何れも日本共産党の田村委員長、れいわ新選組の山本代表は参加していない。Xの指摘は、それを指してのことだろう。 では、国会における党首討論はどのような制度で行われるのだろうか。正式名称は「国家基本政策委員会合同審査会」だ。1999年7月に国会審議活性化法が成立した後、国家基本政策委員会が設置された。党首討論は同委員会のもとで開催される。党首や会派代表が時の総理大臣と向き合って議論する形で、2012年の党首討論では当時の民主党政権の野田首相が自民党の安倍総裁との討論で衆議院の解散を表明したこともあります。NHK「政治マガジン」によれば、英国議会の制度を参考にしたとのこと。 衆議院HPに掲載されている国家基本政策委員会の「運営申し合わせの概要」によれば、党首討論には参加条件が2つある。
①衆院または参院において10人以上の議員で構成されている野党会派(院内交渉団体)の資格を有する野党であること。
②党首が国会議員として国家基本政策委員会に所属していること。
これらを満たさない政党は複数存在するので、党首討論は全政党が無条件で出られるような仕組みにはなっていない。 では、日本共産党とれいわ新選組はどうなのか。以下は衆議院の会派別議席数だ。

れいわ新選組が9議席、日本共産党は8議席で、いずれも参加資格を満たしていない。参議院の会派別議席数を見てみる。

参議院でもれいわ新選組は5議席で、衆議院・参議院ともにれいわ新選組は参加条件を満たしていない。
日本共産党は11議席なので参加条件の10議席を超えており、この時点では党首討論への参加条件をクリアしている。しかし、田村委員長は国家基本政策委員会に所属していないので上記の要件の②を満たしていない。
以上をまとめる。日本共産党の田村委員長もれいわ新選組の山本代表も党首討論に参加する資格を満たしていないために参加できなかったということだ。
InFactのファクトチェックは対象言説を批判するものではない。事実の提示とともに、正しい情報を付加することで誤った情報の拡散を防ぐことを目的としている。
後藤紗良、村上倫太郎、河邊咲希、柴田和樹(大東文化大学社会学部・野嶋ゼミファクトチェックチーム)
(編集長追記)
InFactは従来からジャーナリストに加えて同志社大学などの大学生とともにファクトチェックに取り組んできましたが、今回の選挙では新たに大東文化大学社会学部・野嶋剛教授の指導する学生ともファクトチェックに取り組みます。出稿プロセスは、先ず学生が野嶋教授の指導でファクトチェックを行い、それをInFactでチェックを再度吟味して必要な修正を行った上で最終的に野嶋教授とInFact編集長で了承する形です。InFactのファクトチェックには他にも京都薬科大学、近畿大学の学生が参加しています。是非、投票の参考にして頂きたいと思います。