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【参院選25FactCheck】国民民主、山尾氏の公認取り下げで須藤氏の“順位が上がる”?

【参院選25FactCheck】国民民主、山尾氏の公認取り下げで須藤氏の“順位が上がる”?

「冷静に考えると山尾氏の公認を取り下げるが須藤氏の公認は取り下げない場合、須藤氏の比例での順位が上がる」という言説が X 上で拡散している。しかし、この投稿は参議院の選挙制度を誤解したものだ。

対象言説

「あー。冷静に考えると山尾氏の公認を取り下げるが須藤氏の公認は取り下げない場合、須藤氏の比例での順位が上がるから、より一層「国民民主に投票すべきで無い理由」が強まった形になるな…」

2025年6月11日に X に投稿されて拡散した投稿だ。2025年7月4日現在、この投稿は 2700件以上リポストされ、表示回数は 33万回を超える。

結論

参院選の比例代表選では候補者の名簿は非拘束式で、名簿上あらかじめ当選順位は決められているものではない。候補者は自らの得票数で順位が決まることになり、この投稿のようにはならない。

ファクトチェックの詳細

投稿にある「山尾氏」とは国民民主党から公認を受けたものの、その後公認が取り消された山尾志桜里氏(本名・菅野志桜里)、「須藤氏」とは国民主党から比例代表選の候補者となっている須藤元気氏のことだ。山尾氏はその後、今回の選挙で東京選挙区から無所属で立候補している。

参議院比例代表選の仕組み

選挙ドットコムなどでは、参議院選挙のしくみが次のように説明されている。参院選の選挙方式には、「選挙区選挙」と「比例代表選挙」の 2 種類ある。参院選では定数248の半数ずつが3年ごとに改選され、このうち選挙区選挙で74、比例代表選挙で50の計124の議席が対象となる。総務省の解説も参考にしつつ今回の投稿の対象となっている比例代表選挙についてまとめると次のようになる。

投票所では「選挙区選挙」と「比例代表選挙」の 2 枚の投票用紙が配られる。このうち「比例代表選挙」用の投票用紙には「政党名」か「候補者名」のいずれかを記入する。衆院選の比例代表選挙では「政党名」への投票しかできないが、参院選の場合は政党名・候補者名のどちらでも投票できることになっている。ここでいう候補者名とは、比例区で立候補している候補者の名前のことだ。選挙区で立候補している候補者名は「選挙区選挙」の投票用紙に書く。

候補者名で投票された場合、その候補者が属する政党の得票数としてカウントされる。政党名と候補者名の得票数を合計し、得票総数に比例した数の議席がドント方式で政党に配分されることになる。なお、ドント方式とは、各政党の得票数を 1、2、3…の整数で割り、その答え(商)の大きい順に定数まで議席を配分する方式のことだ。

非拘束名簿方式とは

参議院の比例代表選には、非拘束名簿式が適用されている。それを説明したのが上記の総務省のパンフレットだ。それによると、非拘束名簿式とは、各党が掲出する比例代表の名簿ではあらかじめ当選順位は決められておらず、有権者が候補者名または政党名のいずれかを記載して投票する方式である。このため、有権者は名簿の中から当選させたい候補者名を書いても良いし、政党名を書いても良い。

つまり、結論としては以下のようになる。

・有権者が個人名で投票した数の多さがその候補者の当選順位を左右する。

・他の候補者の公認の有無は、当選順位とは関係なく、その結果として直接当落に影響しない。

衆議院の比例代表選挙との混同

この投稿が拡散しているのには、衆議院選挙の制度との混同が有ると見られる。選挙ドットコムなどによると、衆院選の比例代表制には、非拘束名簿方式ではなく拘束名簿式が適用されている。このため、政党が事前に候補者の当選する順番を決めたリストを作成する。そして、得票数に応じて政党に議席が配分され、その議席の数に応じてリストの上から順に候補者の当選が決定する。つまり、誰かが辞退すれば順位が繰り上がることになる。

しかし、これは衆院選の仕組みであり、参議院選挙の比例代表とは制度が異なる。

(今西遥香,大友美波,宮端帆佳)

編集長追記

InFactは検証の対象となる投稿及びその発信者を非難したり否定したりするようなファクトチェックはしていません。拡散する情報の内容を確認し、明らかになった事実を付け加え共有することを目的としてファクトチェックをおこなっています。

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