楽しみにしていた屋外コンサートに行ったわが子が雷に打たれて死亡したら、あなたはどうするだろうか。天災だとすべてをあきらめ、無念の思いをかみ殺すだろうか。ゲリラ豪雨などが多発していて落雷の危険性は増していると言われている中、2012年に大阪で発生したある落雷死亡事故を振り返りたい。事故は防げなかったのか?事故を防ぐ手立てを講じる必要は無いのか?(アイ・アジア/鈴木祐太)
2012年8月18日、その日の大阪の天気は午前中こそ快晴だったものの、午後から崩れ始める。強い雨は路面を叩き、雷鳴が辺りにとどろき始めた。
この日、大阪市の長居公園では人気グループ「エグザイル(EXILE)」や「三代目 ジェイ・ソウル・ブラザーズ(三代目J Soul Brothers)」などが出演する「エイ・ネーション2012(a-nation 2012)」の大規模なコンサートが午後から予定されていた。
北九州市からコンサートを楽しみに大阪に来た岩永牧子さん(当時22歳)は、会場のある長居公園の地下鉄駅の改札を13時32分に出たことがわかっている。そして雨と落雷を避ける為に、14時10分過ぎ(訴状では10分~15分)に公園内の木陰に避難、そして落雷。
雷の直撃を受けた岩永牧子さんはその場に倒れる。近くの病院に運ばれるが、死亡が確認される。
母親の岩永和子さんは、落雷が予想されたにも関わらず何の手だてもとらなかった会社に責任が無いとは言えないと、次のように話す。
「雷が落ちても命を守れる場所を確保してくれなければ、安心して子どもをライブに行かせられないのはどこの親も同じだと思う。指示や誘導をきちんとしてくれていたら、娘は助かったのではないか」
この日、気象庁は事故前日の15時25分に大阪府全域に雷注意報を出している。また大阪市には13時48分に大雨注意報、洪水注意報が発せられ、14時9分には大雨警報(浸水害)、洪水警報が発せられていた。つまり、牧子さんでなくても、誰かが落雷事故にあう恐れは当日の午前中からあったとも考えられる。