これについて、事故の当日に現場にいて初報段階でもアイ・アジアの取材に応じた現場近くに住む48歳の男性が匿名を条件に再度、取材に応じた。男性は、匿名の理由として、在京の報道機関に所属していていることを理由に挙げた。
「私は東京で単身赴任しているのですが、月に一度は大阪の家族のもとに戻ります。家は長居公園から近いので、帰阪の際には必ず長居公園でジョギングをしています。当日もジョギングをしようと出たのですが、もう凄い人で、『どうなってんねん』という感じでした。今から思うと亡くなられた女性もその中にいたんでしょうけど、人の列が何重にもなっていて、人をよけながら走る状態でした」
その日の天気は昼近くに急変したという。
「ジョギングを始めて20分くらい経った頃でしょうか。時間は覚えていません。いきなり曇り始めて、あとは強い雨。そして雷鳴が轟き始めたんです。それで、ジョギングを中止して自宅に急ぎ帰りました。帰りに見たトイレは人であふれ、そこに入れない人が周辺の木の下に雨宿りする状況でした。ですから、誰が落雷事故に遭ってもおかしくなかったと言っていいでしょう」
現在、公園内には落雷に注意を促す看板が立てられしている。競技場の管理主体である大阪市の外郭団体である長居パークセンターが立てたものだ。そこには以下のように書かれている。
「雷の音が聞こえたら逃げてください」
「雷の光が見えたら逃げてください」
「木の下は危険です」
「すぐに近くにある建物の中に逃げてください」
この看板についても、男性は違和感を覚えているという。
「基本的に、雨宿りができる施設なんてないんですよ。だから、木の下で雨宿りするしかないんです。木の下は危険だというのはその通りですが、そうであれば、雨宿りができるような施設を作らないと事故は防止できないでしょう。私は、月に一度は大阪に帰ってその都度長居公園でジョギングをしています。この正月もそうです。ですが、この看板は私の記憶には有りません。祭壇の近くにも立ててありますから、管理者が言うほど早くから立ててあるなら私が気づかないのはおかしいんじゃないでしょうか?」
男性は、問われているのは主催者側の安全に対する意識ではないかと話す。
「私は48歳です。子供のころ、そんなに落雷事故ってないんですよ。稲光を見るのも珍しかったと思います。でも、今はそうじゃない。稲光ってよく見ますよね。これが気候変動の影響かはわからないけど、都市のゲリラ豪雨などを考えると、少なくとも都市部で落雷事故の発生は珍しいものじゃなくなっていると思うんです。
だったら、屋外施設の管理者はその対応をしないといけないと思います。立て看板を見ても、長居公園の管理者にその感覚があるとは思えないのが残念です」
そして男性は、マスコミや裁判所に適切な対応を求めたいと話した。
「今回の落雷事故は小さなメディアであるアイ・アジアが報じて、それがヤフーニュースに転載されて多くの人が知ることになったと思うんです。でも、新聞やテレビがなんで報じないのか不思議なんですよ。私は大阪のメディアの人間じゃないからわからないけど、私が大阪のメディアだったら取り上げていると思うんです。
それは被害者が少なかったからなのか?『エグザイル』というテレビ局にとってドル箱の存在が訴えられているからなのか、私にはわかりませんが。裁判所にも、しっかりした判決を書いて欲しいです。それは原告が勝つとか被告が勝つとかではなくて、ここで事故を防止するための提言的な文言は是非入れてほしいと思います。そうすれば、遺族の思いは半分くらいは叶えられるんじゃないでしょうか」
大阪のマスコミ、裁判所は男性の言葉、遺族の思いをどう受け止めるのだろうか。判決は5月16日に大阪地方裁判所で言い渡される。