単年度2000億円というのは、税収難に苦しむ日本にとって、けっして小さいものではない。例えば、安倍政権は2015年度介護報酬を2.27%引き下げた。これによって介護費用を2300億円程度抑制する効果が期待されているわけだが、思いやり予算をこうした分野に回すことができれば、人材不足に悩む介護の職場に影響を及ぼす必要はなかったはずだ。
在日米軍が日本防衛だけのために存在しているものではないことは、米軍関係者の誰もが否定していない。在日米軍はハワイにある太平洋軍司令部の指揮下にあり、インド洋までを含む広範な地域で軍事活動を行っているのであって、それを日本が財政的に支えている構図だ。トランプ氏の指摘がまつたくの的外れであることは米国の保守系シンクタンクからも指摘されている。
日本の政策担当者に求められているのは、トランプが切った「思いやり予算」というカードを適切に使うことだろう。駐留経費の推移を見せた上で、そこに含まれていない海兵隊のグアム移転費用についても米国との交渉のテーブルにのせて、日本政府がどれだけ負担しているのか確認してもよい。また、実質的に日本の防衛としては機能していないと言われる沖縄に駐留している海兵隊を名指しして、「トランプ氏からも指摘があった通り、我われとしては海兵隊の駐留経費はこれ以上出せないのでお引き取り願いたい」と言うのも手だろう。
相手が切ったカードをエースで切り返す。それができない人間に、政権の座にいる資格はない。
思いやり予算の推移(防衛省のHPより)
(単位:億円)
1979年 | 280 | 1989年 | 1423 | 1999年 | 2756 | 2009年 | 1928 |
1980年 | 374 | 1990年 | 1680 | 2000年 | 2755 | 2010年 | 1881 |
1981年 | 435 | 1991年 | 1776 | 2001年 | 2573 | 2011年 | 1858 |
1982年 | 516 | 1992年 | 1982 | 2002年 | 2500 | 2012年 | 2573 |
1983年 | 608 | 1993年 | 2286 | 2003年 | 2460 | 2013年 | 1860 |
1984年 | 693 | 1994年 | 2503 | 2004年 | 2441 | 2014年 | 1848 |
1985年 | 807 | 1995年 | 2714 | 2005年 | 2478 | 2015年 | 1899 |
1986年 | 817 | 1996年 | 2735 | 2006年 | 2326 | 2016年 | – |
1987年 | 1096 | 1997年 | 2735 | 2007年 | 2173 | 2017年 | – |
1988年 | 1203 | 1998年 | 2538 | 2008年 | 2083 | 2018年 | – |