◆政府の「留学生30万人計画」が留学生酷使にお墨付き
私は去年、この大学の入学式に父兄を装い潜入した。聞いていたとおり、400名以上の新入生の大半は留学生だった。式で「君が代」が流れても会場は静まり返っている。そんななか、式の途中では安倍晋三首相と下村博文文部科学大臣(当時)の祝電が高らかに読み上げられた。安倍政権もお墨付きを与えているのである。
少子化の影響は甚大で、私立大学の半分で定員割れが起きている。出稼ぎ目的の“偽装留学生”をターゲットにする「サテライトキャンパス」は、今後も増えていくに違いない。日本語学校を入り口にして、専門学校、さらには大学までもベトナム人を食い物にしていこうとしている。
これが今、「留学生30万人計画」で起きている実態である。現在増えている留学生の大半は、出稼ぎを目的にベトナムなどから来日している。いくら日本に滞在しようが、日本語能力は向上しない。言葉の要らない徹夜の肉体労働ばかりやっているのだから当然だ。
彼らは日本企業の海外進出で戦力となる人材などには成り得ない。とはいえ、日本国内で圧倒的に不足している単純労働者としては貴重な存在だ。つまり、「30万人計画」の真の目的は、法律で入国が禁じられた外国人の単純労働者を受け入れるための“裏口”ということである。(続く)
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出井康博 いでい・やすひろ
1965年、岡山県生まれ。ジャーナリスト。英字紙「ニッケイ・ウィークリー」記者などを経てフリー。著書に『松下政経塾とは何か』(新潮新書)、 『長寿大国の虚構—外国人介護士の現場を追う—』(新潮社)など。『ルポ ニッポン絶望工場』(講談社+α新書)を7月21日に上梓。