アイスとは、ICE。Immigration and Customs Enforcementのことだ。訳せば「入国管理・税関捜査局」ということだろうが、誰もが「アイス」と呼ぶ。その捜査機関がトランプ政権になって活発な動きを見せているのは、メキシコとの国境を抱えるカリフォルニア州やテキサス州だ。
政権発足後1か月となるトランプ政権は混乱している様に見えるが、特に中南米からの不法入国者に対する取り締まりは急速に強化されている。
その先兵がこのICEだ。組織の創設は以前からで911の事件を受けて国家安全保障省傘下の捜査機関として2003年に設置された。これまであまり注目されなかったのは、書類の無い違法な入国者であっても、犯罪に絡んでいなければ摘発の対象とはしないなど抑制的な運用が行われてきたからだ。
しかし、トランプ大統領が1月25日に出した国境管理に関する大統領令で、ICEの性格は大きく変わった。それは、犯罪に絡む対象という従来の解釈を拡大解釈し、事実上、入国書類の揃っていない人の全てを摘発の対象としたからだ。これを受けて2月20日に出された国家安全保障省のジョン・ケリー長官の通達は、書類の無い入国者については基本的に逮捕、拘留、そして送還を徹底するようICEをはじめとする関係当局に命じている。
「南部国境地帯での違法入国者の増加はこの地域一帯の組織犯罪の増加をもたらしている」
ケリー長官はこう断じて、国境警備関連で1万5000人を増員するなど更にICEの体制を強化することも明らかにしている。ICEは既に2万人の職員を抱える。これは捜査機関としてはFBIに次ぐ規模だが、それを更に増強するということだ。
当然、人権団体からは懸念の声が出ている。テキサス州で書類の無い入国者の人権問題に取り組んでいる市民グループの関係者は次の様に話す。
(参考記事:トランプ大統領に毅然とした姿勢を見せた独首相)