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沖縄の米軍負担で翁長氏指摘の「70.3%」は事実 沖縄県知事選ファクトチェック

では、次に全国の米軍専用施設の内訳を見てみたい。防衛省の資料によると、北海道から九州までで米軍の専用施設のある都道府県は次のようになる。

北海道、青森県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、静岡県、京都府、広島県、山口県、福岡県、長崎県。

在日米軍のある都道府県
在日米軍専用施設のある都道府県

この中で最も大きな、つまり最も広い面積の米軍施設が置かれているのは青森県だ。F16戦闘機の部隊がいる三沢飛行場の他、射爆場や燃料貯蔵施設などで2374万㎡にのぼる。

続いて1473万㎡の神奈川県。ここには第七艦隊の母港である横須賀の海軍施設の他、同じく海軍の厚木飛行場、陸軍のキャンプ座間などがある。3番目が東京都で1319万㎡。ここには在日米軍司令部が置かれている横田飛行場、レクレーション施設でもあるニューサンノー米軍センターなどがある。

因みに4番目は、安倍総理の地元の山口県で、海兵隊の岩国飛行場などがあり(広島県と山口県にまたがる)、867万㎡だ。

この12都道府県にある米軍専用施設の数は47の施設や区域(演習場)となる。その総面積は7823万㎡だ。よく使われる東京ドーム(4万6755万㎡)との面積の比較で示せば、「東京ドーム1673個が入る広さ」となる。

一方、沖縄県はどうだろうか。問題となっている海兵隊の普天間飛行場が475万㎡、北部演習場が3533万㎡となっているが、この北部演習場より大きいのがキャンプ・ハンセンで4811万㎡だ。ここは防衛省の資料では演習場という位置づけになっているが、実際には海兵隊の実働部隊である31海兵遠征部隊の拠点であり単なる演習場ではない。

また、4000メートル級の滑走路2本を持ち極東最大の空軍基地と称される嘉手納飛行場は1986万㎡もある。因みに羽田空港は1516万㎡で、嘉手納飛行場より小さい。

沖縄県内の米軍専用施設を足し上げると、31施設・区域となり、総面積は1億8496万㎡、つまり「東京ドーム3955個が入る広さ」ということだ(ここまで来ると、余計わからなくなる気もするが)。

ここからは単純な足し算と割り算だ。12都道府県の7823万㎡に沖縄県の1億8496万㎡を足すと総面積は2億6319万㎡となる。それを分母に沖縄県の比率を出すと、70.276%となる。この最後の数字を切り上げたものが、翁長氏が「慰霊の日」に語った「約70.3%」を意味する数字となる。

因みに一部で、「よく”沖縄は日本にある基地の70%を負担している”というが、それは米軍専用施設の話であって、実際の基地の多くは日米共同利用」として、沖縄県が事実と異なる出張をしているかのような言説を流布している人がいるが、翁長氏も沖縄県も「基地の70%を負担している」とは言っていない。そして、この問題は、地位協定上、日本の主権の及ばない施設・区域のことを指しているわけで、自衛隊の施設について評価しているわけではない。

在日米軍施設・区域(専用施設)都道府県別面積(防衛省の資料を基にニュースのタネが作成)
在日米軍施設・区域(専用施設)都道府県別面積(防衛省の資料を基にニュースのタネが作成)

つまり、翁長氏の言葉は、「事実」というレーティングになる。ここで大事なのは、日本政府の資料に依拠した数字だということだ。翁長県政と緊張関係にあった日本政府がまとめた資料でさえ、沖縄県について70%を超える数字が示されていることを重く受け止める必要がある。

【参考記事 「隠れ辺野古容認派」 ここに来て語られるようになったある有権者グループの存在 】

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