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【日本学術会議問題】加藤官房長官会見(10月7日)

【日本学術会議問題】加藤官房長官会見(10月7日)

菅義偉首相が日本学術会議の会員6名の任命を拒否した問題で、加藤官房長官は「総合的俯瞰的な観点から活動が求められる」という任命に当たっての考え方は2003年の総合科学技術会議の最終答申で示され、それにのっとって日本学術会議法の改正が行われたなどと経緯を説明した。(インファクト編集部)

(注)会見録一覧はこちら。記者会見は公開情報ですので、転載等は自由です。首相官邸サイトの動画などで発言内容を確認し、日本学術会議関連の発言は全て抽出するようにしています。途中で別の内容で質疑応答があった箇所は横ラインを入れています。聞き取りにくい部分などは●●としています。必要に応じて正確を期すための修正を行います。

加藤勝信官房長官 定例記者会見(10月7日午前)

(記者)
東京新聞のムラカミです。日本学術会議の任命拒否についておうかがいいたします。
憲法学者からは、憲法15条1項は一般的、抽象的な理念を書いたもので、各種さまざまな公務員がある中で、この条項を基に任命拒否ができるというのは憲法論として大変乱暴な議論だとの指摘があります。
こうしたことから、23条の学問の自由についても、学術会議という学問の防波堤において人事介入が行われた事件、えー、事件であるとの見方がありますが、こうした指摘に対し政府のご認識をおうかがいいたします。

(長官)
まず、憲法23条に定められた学問の自由、これは広く全ての国民に保障されたものでありますが、特に大学における学問研究およびその成果の発表、教授が自由に行われること、学問研究をですね、教授が自由に行えることを保障したものであるというふうに認識をしておりまして、学術会議の会員等が個人として有している学問の自由への侵害には、今回の対応はならないというふうに考えております。
それからこれまでも再三申し上げておりますが、憲法第15条第1項の規定で明らかにされているとおり、公務員の選定罷免権は国民固有の権利であるという考え方からすれば、任命権者たる内閣総理大臣が推薦どおりに任命しなければならないというわけではないということ、これはこれまでも説明をさせていただきました。
こうした中で私ども任命をさせていただいているということであります。

(記者)
朝日新聞のキクチです。よろしくお願いします。関連でお伺いします。
昨日内閣府が公表した文書についてですけれども、83年の国会答弁との整合性についての記載がありませんでした。
昨日の会見でもうかがいましたが、改めておうかがいします。
この2018年の内閣府と法制局との協議では、この83年の政府解釈について協議されたのか、確認したのかどうかの事実関係をお願いいたします。

(長官)
細かいやりとりは承知をしておりませんけれども、そうした過去の答弁等も踏まえながらですね、この文書は作られてきているものだというふうに思います。

(記者)
関連でおうかがいします。
あの、過去の答弁を踏まえたということであればですね、なぜ記載しないのかということをおうかがいしたいんですが、首相の任命権の在り方についての見解をまとめた文書です。
過去の政府解釈との整合性を検討したのであれば、記載しないというのは大変不自然じゃないかと思うんですけれども、これ記載しなかった理由というのはあるんでしょうか。

(長官)
いやですから、あの、これは今日の…、内閣委員会でも答弁があったところでありますが、平成29年の24期半数改選の後、今回の改選に向けて被任命者よりも多い候補者を推薦することについて、推薦と任命の改定の法的整理を行う必要があり、それにのっとってやった、ということでありますから、当然そのときの議論するテーマがあって、しかしその議論の前提としては、過去におけるいろいろなやりとりを当然、踏まえながら議論はしているわけでありますけれども、ベースは、そこに関してどういう答えを整理するかということでありますから、それについて、そしてそれに必要なことについて整理がなされたのが、先日お配りをした2018年の文書ということであります。

(記者)
重ねてお伺いします。朝日新聞のキクチです。
先ほど憲法15条の話が出ましたので、関連でおうかがいします。
公務員の選定に関するこの憲法15条の国民主権の原理からすれば、83年の中曽根元総理が国会答弁した、形式…政府が行うのは形式的任命にすぎないという答弁ですけれども、15条の原理に照らせば、この中曽根総理の答弁自体がおかしいということになるんでしょうか。

(長官)
これは文書の中にもありましたけれども、形式的任命ということについてそれぞれいくつか規定がありますけれども、当然本件についてはもともと15条との関係があるわけでありますから、それを踏まえた中におけるそうした答弁だったという整理であります。

(記者)
重ねて。朝日新聞のキクチです。
公務員の選定に関する権利は、国民固有の権利であるからこそ、総理大臣が責任を持って任命するというのが今回のご趣旨かと思うんですけれども、83年の中曽根総理の答弁ではあくまで形式的だと。
これは憲法15条の趣旨から照らすと、答弁自体がおかしいということになるんでしょうか。

(長官)
いや、答弁自体がおかしい、おかしくないではなくて、当然そうした憲法の規定等が大前提になっている中で、これは私ども普通、国会の答弁は当然でありますけれども、それを踏まえる中で説明をさせていただいているというふうでありますし、当然、そういった形で当時の答弁も行われたというふうに思います。

(記者)
毎日新聞サトウです。関連でおうかがいいたします。
確認ですけれども、総理が日学法17条による推薦のとおりに任命すべき義務があるとまでは言えないという政府の見解ですけども、これは日本学術会議の人事が推薦、任命制になってから一貫した考えであるというご認識でよろしいでしょうか。

(長官)
それはもちろんそうであります。

(記者)
毎日新聞サトウです。重ねておうかがいします。
先ほどの質問にも若干ございましたが、一方で過去の答弁には推薦された者をそのまま任命だとか、形式的な任命にすぎないだとかいう趣旨の答弁もございます。
とすると政府としては、形式的に推薦どおり任命したけれども、必ずしも、あ、必ず推薦どおりに任命すべき義務があるとまではこれまで言っていなくて、だからこそ今回、総合的俯瞰的に活動してもらう観点から判断して、6人任命を見送ったという整理なんでしょうか。

(長官)
いや最後のところ、ちょっと違うと思うんですが、前段のところは、これまでも一貫してそういうことでありました。
総合的俯瞰的という視点が入ったのは、たしか平成15年か16年、ちょっと正確じゃありませんが、総合学術会議からですね、日本学術会議における活動としてそうしたことが期待されるということが指摘をされ、それも踏まえて私たちは任命に当たっているということであります。

(記者)
産経新聞チダと申します。関連しておうかがいいたします。
日本学術会議に関して、中央省庁等改革基本法に基づく、2003年2月、総合科学技術会議の最終答申の中で、日本科学、えー、日本学術会議の在り方についてではですね、設置形態については欧米主要国のアカデミーの在り方は理想的方向と考えられ、日本学術会議についても今後10年以内に改革の進捗状況を評価し、より適切な設置形態の在り方を検討していくとされていますが、その後、政府のほうで設置形態の在り方を検討されたことはありますでしょうか。
もしない場合はこれまで手をつけてこなかった理由について教えてください。

(長官)
まずあの、平成15年の総合学術会議の最終答申にまとめに至るプロセスでは、いろんな議論があった、そしてそれがいまその答申の中に出て、えー、そして10年以内に在り方を検討するとされているわけであります。
で、それを踏まえて、平成26年から日本学術会議の新たな展望を考える有識者会議において、日本学術会議の今後の展望について検討が行われ、平成27年3月8日に日本学術会議の今後の展望についてとして取りまとめられたところであります。
この取りまとめ、それ、読んでいただければと思いますが、安定的な運営を行うためには国の予算措置により財政基盤が確保されることが必要とされ、現在の制度は日本学術会議に期待される機能に照らしてふさわしいものであり、これを変える積極的な理由は見出しにくいとされているということであります。

(記者)
北海道新聞イシイです。学術会議についておうかがいします。
先ほどもありましたが、会員の任命の仕組みとして、総合的俯瞰的活動を確保する観点から選ぶようになったのはいつからでしょうか。
そうした基準を定めたことと省庁再編とのどのような関連があったんでしょうか。

(長官)
日本学術会議の在り方については、省庁再編時についてもいろいろ議論がなされ、行政改革会議の議論も踏まえ、一時期には総務省にそれが置かれていくという時期もありました。
そうした中でいろいろ制度改正がなされて、先ほどの議論にもつながるんですけれども、平成15年の総合学術会議具申において、総合的俯瞰的な観点から活動が求められているとの考え方が示されたわけでありまして、それを踏まえて16年、法律の改正もされたところでありますが、そうしたことが求められているというそうした指摘を踏まえて、政府としてもですね、任命に当たってきたということであります。

(職員)
…次最後でお願いします。

(記者)
関連して先ほど内閣委員会で、総合的俯瞰的という具体的にどういうことかという説明が、副大臣、説明されていたんですが、この中で業績にとらわれない広い視野に立って活動を進めていただくと。
業績にとらわれないというのは、選定に、任命に当たっては業績は考慮しないという、そういうことなんでしょうか。

(長官)
いやいやそうじゃなくて、業績についてちょっといま文書を持っていませんが、そうした優れた業績のある人から推薦するということは書いてあるわけでありますから、当然その上に立って、まさに総合的俯瞰的に活動していただきたいということであります。


2020年10月7日午前、首相官邸

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