菅義偉首相が日本学術会議の会員が後任を「指名できる仕組み」との発言がミスリードの指摘を受け「推薦できる仕組み」に発言を軌道修正したとみられる点について、加藤勝信官房長官は、会員が推薦した候補者が後任の推薦名簿に残る仕組みになっていると説明した。(インファクト編集部)
(注)会議録一覧はこちら。記者会見は公開情報ですので、転載等は自由です。首相官邸サイトの動画などで発言内容を確認し、日本学術会議関連の発言は全て抽出するようにしています。途中で別の内容で質疑応答があった箇所は横ラインを入れています。聞き取りにくい部分などは●●としています。必要に応じて正確を期すための修正を行います。
加藤勝信官房長官 定例記者会見(10月21日午前)
(記者)
東京新聞のムラカミです。話題変わります。日本学術会議の会員任命の考え方についておうかがいいたします。
この会見でも類似の質問を何度かいたしていますが、改めて確認させていただければと思います。
9月28日に総理が99人の任命を決裁するまでに、菅総理に説明が行われたこの任命についての考え方なんですけれども、具体的に、考え方とはどういうものなのでしょうか。
個別の6人についての任命についてはお答えできないというのはご説明いただいてますけれども、この全体の任命に当たっての考え方とはどういうものなのでしょうか。
(長官)
まずあの、日本学術会議の会員の任命については、日本学術会議の設置目的に照らし、すぐれた研究または業績があるとして推薦された会員の候補者を、日本学術会議法にのっとって内閣総理大臣が任命をしているということであります。
それから日本学術会議そのものは、(やや沈黙)ええ、政府の所轄、たしか所轄という言い方してたと思いますけれども、にあるということと、特別職の国家公務員であるというその位置付け、そして、会員を任命する仕組みは時代に応じて変遷はしてるところでありますが、今般の任命に当たっては、専門枠の枠にとらわれない広い視野に立って、総合的、俯瞰的観点から活動を進めていただくということを考慮して、これはこれまでの総合科学技術会議等々における指摘等を踏まえてるところでありますが、それにのっとって行ったということであります。
菅義偉首相(10月21日午前)
(記者)
朝日新聞のイザワといいます。よろしくお願いします。
私は内政についてお願いします。
総理は帰国後、週明けから臨時国会に臨まれることになると思います。
臨時国会では、日本学術会議の問題が論戦の大きなテーマの一つになるかと思います。
野党側が求めている、6人の推薦をしなかったという点について今後どのようにご説明をされていくのか、お考えを聞かせていただければと思います。
…(後略)…
(首相)
私が日本学術会議において申し上げてきたのは、まず年間10億円の予算を使って活動している政府の機関であるということです。
そして、任命された会員の方は公務員になります。
ですから、国民に理解をされる存在であるべきだということを申し上げてます。
また、会員の人選は、出身や、そうしたものにとらわれずに、広い視野に立ってバランスの取れた活動を行っていただきたいということ、そういう意味から私自身は、総合的、俯瞰的と申し上げております。
国の予算を投じる機関として、国民に理解される、このことが大事だと思います。
また、会員の人選は、最終的に選考委員会などの仕組みがあるものの、まずは現在の会員の方が後任を推薦することも可能な仕組みになってるということも聞いています。
今回の件はこうしたことを考えて、推薦された方々がそのまま任命をされてきた、前例踏襲をしてよいのかどうか、考えた結果であります。
先週、梶田新会長とお会いしましたが、各分野の研究者の英知を集めた団体なのだから、国民に理解されるように、日本学術会議をよりよいものにしてこうと、こういうことで、会長と合意をしました。
今後、科学技術担当の井上大臣に窓口になっていただき、議論を続けていきたい、このように思っています。
…(後略)…
(2020年10月21日、ベトナム及びインドネシア訪問についての内外記者会見)
加藤勝信官房長官 定例記者会見(10月21日午後)
(記者)
朝日新聞のキクチです。よろしくお願いします。学術会議についておうかがいします。
菅総理は先ほどのインドネシアでの内外記者会見の中で、会員の選定プロセスについて、「現在の会員が後任を推薦することも可能な仕組み」と述べられました。
一方で、今月5日と9日に行われたインタビューの中では、「事実上は現在の会員が後任を指名することも可能な仕組み」と述べています。
これまでのご自身の発言を修正したと理解してよろしいんでしょうか。
(長官)
まずあの日本学術会議における会員候補者の選考においては、日本学術会議会則において「会員および連携会員は会員候補者を選考委員会に推薦することができる」とされて、まあその規則上は「推薦」という言葉を使っておりますけれども、ある意味では名指し、この人でと推薦することを指してですね、総理は指名という言葉を使われたんではないかというふうに思いますので。
(記者)
朝日新聞キクチです。重ねておうかがいします。
実際の会員プロセスでは、長官おっしゃるように、指名することは事実上できないと思うんですけれども、推薦するだけで、これまでの菅総理の発言は、やはりまるでその現在の会員が後任者を指名するかのような誤解を与え、ミスリードするような発言だと思うんですけれども、長官のご見解をお願いします。
(長官)
まあその指名ということでどういうふうに受け止めるかということはあるのかもしれませんが、ただそれ、現実としていま申し上げた会員、あるいは連携会員が、候補者を推薦することができ、そしてその推薦されたものをベースに選考過程が進んでいくというそのプロセスは会則にも書かれているわけでありますし、実際その推薦された中から最終的に、政府に対してですね、推薦される人も決まっていくということ、そこを全体を通じて、総理がそういうふうに感じられたことをおっしゃったんだというふうに思います。
(記者)
東京新聞のムラカミです。関連でおうかがいいたします。
そうしますといまの質問ですが、その推薦、ああ、お答えですが、推薦することができ、推薦をもとに選考できるとのプロセスということでしたけれども、そうしますと、きょう首相が言われました、まず現在の会員の方が後任を推薦することも可能な仕組みというふうにおっしゃっていました。
ただ、いまのそのご説明ですと、後任を推薦したとしても、その推薦をもとに選考するというプロセスということで、そうすると、特段そこに何が問題になるとかというのが逆に分からなくなるんですけれども、そこが、まず現在の会員の方が後任を推薦することも可能な仕組みというのは何が問題ということになるんでしょうか。
(長官)
あの、いま申し上げたように、選考ってのは選考委員会が選考して、最終的には推薦名簿に至るわけでありますけれども、そうしたプロセスの中で、もちろんいまの仕組みはそういう仕組みになってるんですね、ご説明申し上げたように、会員規則において「会員および連携会員が会員候補者を選考委員会に推薦することができる」と、これは会則に書いてあり、それにのっとって、いま選考がなされてきていると。
しかし、それをずうっと突き詰めてみるとですね、要するに会員の方が推薦した方が、結果的において最後の推薦名簿に残っているという、そうした流れ、残りうるという、正確にいえば、残りうるという流れの中でですね、それを総理がそういうふうに感じられたということではないんでしょうか。
(記者)
東京新聞のムラカミです。
総理のそのご説明ですと、つまりその推薦書に従って、それをそのまま任命することが問題であるというふうに総理おっしゃってるというふうに認識をしてるんですけれども、そうしますと、政府としては現会員が後任を推薦するという、そのこと自体問題というふうにお考えだったんでしょうか。
(長官)
いや、ですからそれは、そうしたこと、そこの、そこを見るとですね、結果的において、その後任の、いまの会員の方々が次の方を、いわば総理は指名とおっしゃいましたけれども、そうした仕組みになっているという、そのことのみならず、総理がおっしゃってんのは、10.5億円の予算であり、特別職の公務員であり、そしていま、総合的俯瞰的な選定が求められているということを全体を見て、今回任命を考え、任命をしてきたということでありますから、そこだけを見て言ってるわけではないということであります。
(記者)
北海道新聞のイシイです。学術会議に戻ります。
総理が先ほど記者会見で、会員の人選について、広い視野に立ってバランスの取れた活動を行っていただきたいというふうにおっしゃってましたが、そのバランスが取れてるというのは具体的にどのような状況を言うんでしょうか。
(長官)
むしろあの、先ほどの会見において「広い視野に立ってバランスの取れた行動を行っていただきたいということを、そういう意味から私自身は総合的俯瞰的と申し上げております」ということでありますから、まさに総合的俯瞰的という意味を、今申し上げたようなかたちで総理は表現されてるということではないんでしょうか。
(記者)
北海道新聞のイシイです。
そうしますと、他に選ばれた方は、例えば政治的に中立、バランスを取ってほしいとか、そういった、そういう活動を求めてるということ…
(長官)
ごめんなさい、どういう方はですか。
(記者)
政治的に中立であることを、バランスを取りながら活動してほしいという、そういう期待をしていらっしゃるということなんでしょうか。
(長官)
いや、ですから、総合的な俯瞰的観点からの活動を進めていただけるように、あるいは、そういう活動を期待してるということはこれまでも総合科学学術会議等からも出てきてるわけでありますから、まさにそのことを指して言われてるということだと思いますが。