
「国保って半分ぐらい未納らしい」という言説がX上で拡散している。しかし「国保」が「国民健康保険」を指すとしたら、その納付率(収納率)は8割を超えている。
対象言説

(2025年5月31日、X上のポスト)
結論
投稿にある「国民健康保険」にしても、その元になる投稿にある「国民年金」のどちらも納付率(収納率)は8割を超えており、「半分くらい未納」は正しくない。
ファクトチェックの詳細
この投稿は、年金制度改正法案の中にある基礎年金(国民年金)の底上げ策に対する批判の投稿をリポストしたものである。2025年8月3日現在、137万回表示され、2.8万回いいねされ、3800回以上リポストされている。
投稿者はポスト上で「国保」と述べているが、引用ポストやリプライ欄を確認すると「国民年金」についての議論が行われていた。そのため、投稿者が「国保」、つまり国民健康保険ではなく「国民年金」のことを指している可能性があると考えられる。そこで、国民健康保険の収納率と、国民年金の納付率の両方を調査した。
国民健康保険の収納率
厚生労働省によると、国民健康保険は他の医療保険制度(被用者保険、後期高齢者医療制度)に加入していないすべての住民が被保険者となる。都道府県及び市町村(特別区を含む)が保険者となる市町村国保と、業種ごとに組織される国民健康保険組合から構成されている。

(筆者作成:厚生労働省「令和4年度国民健康保険(市町村国保)の財政状況について」「国民健康保険(市町村国保)の財政状況」参照)
2024年8月8日、厚生労働省が国民健康保険収納率について発表した最新の資料である「国民健康保険(市町村国保)の財政状況」によると、2022年度の国民健康保険料(税)の収納率は94.14%となっている。そのため、「半分くらいが未納」という状況ではない。
国民年金の納付率
日本年金機構によると、国民年金には20歳以上60歳未満のすべての人が加入している。

(厚生労働省「国民年金保険料の納付率について(月次)」より「令和7年3月末現在 国民年金保険料の月次納付率」)
厚生労働省によると、2025年3月末現在の国民年金保険料の最終的な納付率は83.8%(2022年3月分保険料の納付率参照)となっている。加えて、上記の表の赤枠の部分からいずれの年度も納付率が8割近いことがわかる。そのため、「半分くらいが未納」という状況ではない。
因みに、この表にある月次納付率について説明すると以下のようになる。2018年から月次納付率を考える上で「1年経過納付率」「2年経過納付率」「3年経過納付率」という指標を用いている。国の国民年金保険料を徴収する権利は徴収できる時から2年間で時効消滅する。そのため、国民年金保険料の支払い義務は2年消滅する(国民年金法102条4項)。このことから、国民年金の納付率は3年の経過から算出している。例えば、「3年経過納付率」は「各月の保険料が3年経過後にどれだけ納められているかを示すもの」を指す。
(藤井杏,高橋寧々,光田彩乃)