
「官報の観覧が規制された。帰化情報が90日しかみられないため、遡って調べることができなくなる」との投稿がSNS上で拡散した。それは本当なのか?これらの主張についてファクトチェックした。

対象言説
「今年の4月から帰化情報も官報にすら載せなくなった」「官報の観覧が規制された。帰化情報が90日しかみられないため、遡って調べることができなくなる」Xの投稿。投稿は2025年のものであり、「今年の4月から」とは2025年4月からを指す。

結論
帰化情報を含めプライバシーへの配慮が必要な記事は90日経過で非公開となるが、紙の官報の正本は国立公文書館、国立国会図書館で永久保存され、閲覧は可能である。「遡って調べることができなくなる」ということではない。
ファクトチェックの詳細
官報とはなにか
対象言説は2025年5月8日に発信され、2026年3月7日現在で100万を超える表示、3万超のいいね、5500余のリポストを記録するなど拡散している。
まず、官報とは何か確認したい。「官報」は、国の法令や公示・公告事項を掲載し、国民に周知するための「国の公報」である。初創刊となる1883年以来、紙の印刷物としてとして発行されていた官報は「官報の発行に関する法律」の施行により2025年4月から電子官報が正本となった。詳しくは内閣府「官報について」から確認することができる。
2025年4月の電子官報への移行で何が変わったか
2025年4月以前、官報は国立印刷局本局などで確認できる紙の印刷物(正本)に加え、1999年から始まった「インターネット版官報」で内容が公開されていた。今回の「官報の発行に関する法律」の執行では、この発行方法が完全に紙媒体から電子官報に移行したことになる。電子官報では、プライバシーへの配慮が必要な記事等の公開期間は90日に限定されているが、それ以外の記事は90日経過後も観覧できる。
電子官報の閲覧・頒布期間については、「官報電子化の基本的考え方」(令和5年(2023年)10月25日官報電子化検討会議)の第5章「電子官報の運用・管理に関する事項」によると、「現在の『インターネット版官報』は、90日の期間、無料で公開していることを踏まえると、今回の官報の電子化に当たっては、国民が少なくとも同等の期間、無料で官報を入手し、又は閲覧することができるよう、当分の間、少なくとも90日の期間を確保することが望ましい」とされているとおり、利便性確保のため少なくとも90日間の公開期間を確保する旨が明記されている。
また、プライバシーへの配慮については、「官報に掲載される記事のうち、例えば、特定の名宛人を対象とする処分等に関するものについては、各制度の趣旨に鑑み、それぞれ官報をもって公にする必要がある一方で、情報の加工・流用や目的外利用の危険性が高いといったインターネットを通じた閲覧の特性を踏まえると、氏名や住所等の個人情報が永続的にインターネットにより公衆の閲覧に供され続けることは、プライバシーへの配慮の観点から望ましくない場合もあり得る。このことを踏まえると、現在の『インターネット版官報』において全ての記事が90日間公開されているところ、全ての記事について閲覧・頒布期間を永続的なものとすることは、慎重な検討を要すると考えられる。また、適切な技術を活用するなど、プライバシーへの配慮のための必要な措置をとることも必要である」とされている。
実際、インターネット版官報の公開期間は以下のように推移してきた。
1999年11月15日~:直近1週間
2009年4月1日~:公開期間を30日間に拡大
2023年1月27日~:公開期間を90日間に拡大
また、基本的に特定の個人を対象とした処分等、プライバシーの確保に配慮が必要な記事を除いてだが、過去の官報(2003年7月以降)をオンライン上で読むことができる。ネット上ではプライバシーへの配慮が必要な記事は90日経過で非公開となるが、紙や電子の官報の正本は国立公文書館、国立国会図書館で永久保存され、閲覧は可能である。これについてあらためて国立公文書館及び国会図書館に確認を行った。以下がその回答だ。
国立国会図書館・国立公文書館からの回答
国立国会図書館
「官報掲載事項記載書面の閲覧及びインターネット収集保存事業の利用によって、プライバシーへの配慮が必要な記事も閲覧可能である。それは国立印刷局提供の「官報情報検索サービス」(有料)を使っても同様だ。」
国立公文書館
「官報サイトでは、発行から90日経過後は、プライバシーへの配慮が必要な一部の記事は閲覧・ダウンロードができなくなると認識しておりますが、当館にご来館いただければ、館内限定のデジタルアーカイブで官報全体を閲覧いただくことができます。なお、官報は発行から原則90日間の官報サイトにおける閲覧期間経過後、当館に一定期間ごとにまとめて移管されることになっております。本年度移管された官報は、来年度夏ごろに館内限定で閲覧できるようになる見込みです。」
担当者は国立公文書館での閲覧の仕方も教えてくれた。
「ご来館された際に、閲覧室の利用申込をしていただきます。その後、2階閲覧室にて、館内限定のデジタルアーカイブで閲覧をしていただき、ご希望の場合は、1枚30円(A4のみ、カラー・モノクロ)でプリントアウトして、お持ち帰りいただけます。当館にご来館されない場合や上記以外のメニューをご希望の場合(A4以外の用紙への出力、DVDへの書き込み)は、利用請求書(写しの交付)をご提出いただき、複写物を作成、提供いたします。業者に委託をいたしますので、お渡しまでに1ケ月ほど要します。」
詳しくは、国立公文書館のサイト内の「写しの交付・特別複写のご案内」で確認できる。
プライバシーの配慮が必要な記事
以下にプライバシーの配慮が必要な記事について補足しておく。これは帰化情報だけではない。国立印刷局の資料によると、電子官報で90日経過後にネット非公開になる記事には帰化情報以外に以下の内容が含まれている。
・終局裁判の公示
・無縁墳墓等改葬
・配当公告
・相続、公示催告、失踪、破産、再生、免責等
(石盛なごみ)
編集長追記
ファクトチェックは「旬」を追うことが求められることが多々あります。特にネット上の言説をチェックする際は、発信がなされてから遅くとも1週間くらいで出さないと誤った情報が拡散されてしまうので意味が無いと考えられ、その指摘は理解できるものです。他方で、それではファクトチェックの対象が簡単に調べられる内容に偏ったり、或いはファクトチェックそのものが雑になってしまう懸念も生じます。今回のファクトチェックでは、ファクトチェッカーは法務省、国会図書館、国立公文書館とのやり取りを続け長期間にわたって作業をしています。その結果、この情報に接してから半年以上かかって記事化しているわけですが、InFactはそうした作業も重要だと考えています。今後も引き続き時間をかけたファクトチェックに取り組んでいきます。

