
NHK『日曜討論』での自民党・小林鷹之議員の発言が、首相への批判をけん制したとして批判される一方で、首相への諫言との意見も出ている。実際の発言はどうだったのかを内容を確認した。(画像はNHK日曜討論から)
対象言説
小林議員「今高井さんがいろいろと、『総理が国民生活を1ミリも考えていないんじゃないか』。ま、一国のリーダーなので、ちょっと言葉遣いについては慎重であって頂きたいと思います。」(NHK『日曜討論』3月15日放送)
この発言に対して、これは高井議員に対してではなく、首相に対して向けられたものとされる指摘も出ているため、その詳細を確認する。
結論
発言の流れからは高井議員に対する発言と読み解くのが自然だが、あくまでそれは外形的な評価でしかないので、ファクトチェックとしての結論は控える。
ファクトチェックの詳細
問題のやり取りは番組の冒頭で、衆議院で予算案が可決したことについての各党の受けとめを問われた際のやり取りだ。司会者に問われたれいわ新選組の高井崇志議員は次のように発言した。
「憲政史上最悪の予算審議だったと思います。ちょうど一カ月前のこの番組で自民党の井上さんは、『数の力におぼれず謙虚にやる』なんて言っていましたけれど、真逆ですよね。」
この後が小林議員の発言の対象となって拡散している部分と思われる。
「私は総務省出身で、総務委員会筆頭理事も務めたので、高市大臣が総務大臣のころからよく知っているんですけど、とにかく人の言うことをきかない。絶対に間違いなど認めない、そんな傲慢な人です。国民生活のことなど1ミリも考えないで自分の都合で解散してこの番組も30分前にドタキャンしてますよね。年度内に予算が通らないのは自分のせいなのに、謙虚さが微塵も感じられません。」
この後、高井議員の批判は野党にも向く。
「ただね、野党もふがいないんですよ。中道の小川代表は後世に引き継ぐのは恥ずかしいなんて言っていますけど、ならばなぜ解任決議一本ですますんですか?体はってでも止めるべきですよ。与党も野党も茶番なんです。れいわ新選組は必ず次の選挙で議席を増やしてふがいない国会に終止符を打ちます。」
この高井議員の発言を踏まえた司会者から小林議員への質問は、少数与党である参議院ではどこに協力を求めるのかとの問いだった。小林議員は先ず以下のように発言している。
「それ自体は参議院での国会運営上の様々な状況を見て、ということを考えています。筋論は、いろいろ協力は求めるんですけども、今回の予算案の妥当性と正当性と、あとは年度内にとにかく予算を成立させないといけないという思いをお伝えし、そこにどれだけの政党が評価を頂けるか、と言うことに尽きると考えます。」
その後が、対象言説となった部分だ。
「それと今、高井さんがいろいろと、『総理が国民生活を1ミリも考えていないんじゃないか』。ま、一国のリーダーなので、ちょっと言葉遣いについては慎重であって頂きたいと思います。でも私は全くそうは思いませんね。これだけ、これほど国民生活のことを考えている方はいないと思っているんで、だからこそ年度内の成立にこだわってやっていると受け止めています。」
内容を確認する限り、小林議員の発言は高井議員の高市首相批判に対するものとなっていると考えるのが自然だが、それも確定的なものではないのでファクトチェックとしては結論を控えざるを得ない。また、このファクトチェックは小林議員の発言の是非を検討するものではない。
(立岩陽一郎)
編集長追記
アメリカの地上波各社は日曜日の午前中に政治家を登場させる討論番組を放送しています。それは週末に人々が政治を身近に感じる時間となっています。一方、日本ではNHKの日曜討論が名称を変えて続いていますが、民放はフジテレビ系列の日曜報道THE PRIMEがあったものの、その番組も2026年3月で終わることが発表されています。
このNHKの番組は「討論」となっていないなどの批判を度々浴びますが、政治家がどのような認識をもっているかを知ることは可能です。今回の小林議員の発言は、ファクトチェックとしての結論は敢えて出さないものの、ある意味で将来の総裁とも目されている自民党の若手有力議員の認識を示すものとなったと言えるのかもしれません。その認識についての是非はそれぞれで、仮に高井議員に対するものだったとしても、その小林議員の指摘に賛同する人もるでしょう。大事なことは国権の最高機関である国会の透明性であり、当事者であり私たちの代表である国会議員の考えを私たちが知ることです。
InFactは政治家が出演して発言するこの番組を重視しており、過去にNHKに対して番組での議員の発言を活字にして公開するよう求めています。現在のところ、NHKから返事は得ていません。
因みに、日曜討論は国会裏の千代田放送会館で収録されており、その際には主要メディアの政治部記者がスタジオに詰めかけています。そして、新たな話が出れば直ぐに記事化しています。加えて共同通信はこの番組での議員の発言を文字化して加盟社に配信しています。仮に、自民党の政務調査会長が同党総裁である首相に対して諫言したとなれば、直ぐに「党内不一致」といったニュースになって報じられていたとは言えるでしょう。

