インファクト

調査報道とファクトチェックで新しいジャーナリズムを創造します

橋下政治資金の不可解(2) 秘書一族がパーティー券大量あっせん

◆後援会長の息子 橋下氏が条例作って採用
(アジアプレス編集部)
パーティー券のあっせんという記載が目立つ橋下徹大阪市長の後援会の政治資金収支報告書。調査を行った「政治資金オンブズマン」は、あっせん者として記載されている人物にも不可解な点があると指摘する。
記載されている1人は、奥下剛光氏。現在、大阪市長の特別秘書を務めている人物だ。他に、奥下秘書の母親で橋下氏の後援会長を務める奥下素子氏も記載されている。奥下秘書の実弟で大阪府茨木市に本社のあるセメント卸会社の代表の記載も見られる。

200708ink-pyongyang-199a.jpg
橋下徹後援会の奥下素子会長と息子の奥下剛光氏(市長の特別秘書)が、パーティ券あっせんしたことを示す政治資金収支報告書 (写真アジアプレス)
※写真をクリックすると拡大されます。

2008年とは、橋下氏が大阪府知事に当選した年だ。この時、奥下素子氏はパーティー券266万円をあっせん。奥下秘書は300万円をあっせんしている。合計、566万円のパーティー券のあっせんとなっている。
その翌年は素子氏が348万円、奥下秘書が613万5000円、それに他の親族も合わせて1081万5000円のパーティー券あっせんとなっている。その翌年も奥下素子氏が420万円、奥下秘書が391万5000円。他の親族も合わせると総額1037万円になる。
つまり奥下秘書の一族よってあっせんされたパーティー券の総額は3年間で3000万円を超える。後援会の収入の半分以上が、奥下秘書の一族によって集められている構図が見てとれる。
この点について、「政治資金オンブズマン」共同代表の阪口徳雄弁護士(大阪弁護士会)は次のように問題点を指摘する。
「橋下徹後援会を奥下一族が支えている収支報告書を見て本当に驚いた。政治団体の総収入の約5割強を特定の一族が支えていることになる。田舎の町会議員や市会議員なら、特定の一族が支援していることはあるのだろうが、都道府県レベルの知事が特定の一族によって金銭面で支援を受けているケースは、長年、政治家の収支報告書を見てきたが初めてだ」
奥下秘書は特別職の公務員だ。しかし、大阪市には、もともとこの特別秘書という役職は無かった。2011年、橋下氏は大阪府知事を辞職し大阪市長に転身する。その翌年、橋下氏は大阪市の条例を制定して、奥下秘書を特別に大阪市に採用している。ちなみに、大阪市によると奥下秘書への給与は年650万円となっている。
阪口弁護士はこの点についても、不透明さを感じると指摘している。
「条例まで新設して自分を支えている一族の奥下剛光氏を2012年2月1日から大阪市の特別秘書に採用したということが驚きだ。『これはお世話になった後援会の方への税金での恩返しではないのか』、『古い政治家がよく行う情実人事の典型ではないか』と疑われてもおかしくない。この点について橋下氏は説明する必要がある」
200708ink-pyongyang-199a.jpg
表 奥下一族によるパーティ券あっせんの内訳(作成 政治資金オンブズマン)
※写真をクリックすると拡大されます。

    ※ 詳細資料 (PDFファイル)
     「橋下徹後援会の政治金収支報告書」 2008年度分
     「橋下徹後援会の政治金収支報告書」 2009年度分
     「橋下徹後援会の政治金収支報告書」 2010年度分

※政治資金オンブズマン
弁護士や研究者で作る政治家の政治資金を監視するNGO。上脇博之教授(神戸学院大学)と阪口徳雄弁護士(大阪弁護士会)が共同代表を務める。これまでに数多くの政治家の政治資金などについて調べ、悪質なものについては刑事告発を行うなどしてきた。2012年3月には安倍元官房長官の官房機密費の情報公開請求をして一部開示命令の判決を勝ち取っている。この11月22日に河村元官房長官の2.5億円の情報公開判決が予定されている。

<<前へ (橋下政治資金の不可解(1) 8割強がパーティー券あっせん) │ 次へ>>

Return Top