元家族会事務局長の蓮池透さんとジャーナリスト石丸次郎の対談連載の二回目。7月初めにも北朝鮮側から「在朝日本人調査」の結果報告があるという観測が流れている。その真偽は不明だが、仮に報告があるとして、それが安倍政権の「望むもの」であるとは限らない。蓮池さんは「真相・真実の解明」が拉致問題の解決であり、そのための調査であるべきだという。(アイア・アジア編集部)
蓮池:私は、他の問題ももちろん深刻な問題ですけれど、「拉致問題は最重要課題」だって言いにくくなるかもしれないので、最初から別個にしとけばよかったんじゃないかなと思います。5月の「ストックホルム合意」は、そもそも何を持って合意かというのが全然決まっていなかった。拉致だったら拉致に絞って、もっと短期期間でやるようにすべきだったんじゃないかなと思うんです。
石丸:調査委員会を立ち上げるということが合意でした。
蓮池:そうです。拉致問題について「じゃ何がどうなったら解決なのか」というのが全然合意されていないです。安倍さんなんか全員帰国しか言わないですけど、じゃ何を持って拉致問題の解決なのかというのをみんな全然わかっていないし、もう今度(拉致被害者が)死んでるなんか言ったら許さねぇぞという雰囲気が醸成されてしまったんですね。
それじゃ、私はうまくいかないと思います。何を持って解決かというのを、総理大臣がびしっと決めて、ここまで行ったら解決ですよということをはっきり国民に知らしめないと。ずっと一方的に主張しあってきたわけですから、その点で北と合意しとかないと本当にゴールが見えない。
石丸:安倍さんは今もそうですけれど、拉致問題を解決する、景気よくする、というキャッチフレーズはいっぱい言うけれど、具体的な中身をあんまり言わない人です。威勢のいいことは言う。しかし、「何をもって拉致問題の解決とするか」を言わないのは、自身に対する保険だったと思います。もし拉致被害者の中で亡くなったことがはっきりした人が出たら、安倍さんは自分に世論の矛先が向いてくるかもしれないと考えたのでしょう。
その辺をあえて曖昧にしながらやって、一番いいタイミングで一番自分の「欲しい人」が帰ってくる、それを自分が迎えに行くというようなシナリオを描いていたのかもしれない。そして、もし最後にうまくいかなかったら、北朝鮮のせいにすればいいと。
蓮池:逃げ道ですよね。