●本当の狙いは利益相反問題の解消
しかし、ロシア問題より力を入れて狙ったのが利益相反の問題だ。トランプ氏が問われている最も大きな問題は実はこれだ。巨大ビジネスの経営者が大統領の地位にいるということで、自己の利益に沿った政策を行うことが懸念されているのだ。
トランプの企業グループは不動産業を中心に各国でビジネスを展開し、或いは展開しようとしている。最近も、中南米での事業展開の話が問題視され、グループの弁護士が否定に躍起になるということがあった。
この問題への説明は特に力の入ったものだった。まず、自らが企業グループの経営から手を引き、経営を2人の息子に託すことを決めたと発表。そのために必要な膨大な資料を記者の前に並べて見せて、「私は経営に関する相談にはのらない。のっても問題はないのだが、それはやらない」と言った。
その上で、弁護士も入れて細かい法律の問題にまで言及。ここで強調したのは、利益相反はそもそも大統領に対しては法的な問題が生じないということと、その一方で、それでも人々の不信感を持たれない為の措置をとったというもの。
”’しかしこの問題はロシアの問題のように言いっぱなしで終われる問題ではない。当然、この会見でこの問題に幕引きとはならないだろう。トランプ氏は自らの会社の経営から手を引くとは言ったが、株主としての権利は保持するとしている。自らを会社の利益と完全に分離できる状態とは言い難い。また、大統領職が利益相反の問題に接触しないという解釈にも異論は有る。”’
その上、トランプ氏は1つのエピソードを紹介している。つい最近もアラブ首長国連邦の知人から多額のビジネスを持ち掛けられたというものだ。それを自分は断ったと高らかに語ったわけだが、それはつまり、そういう話が今後も付きまとうということを意味している。手を変え品を変えて説明を尽くしているように見えて、極めて脆弱な理論武装のように思える。
それにこの問題はトランプ氏だけの話ではなく、そもそも政権そのものが利益相反の巣窟のような状況だ。ホワイトハウス入りが決まっている娘婿や投資家の話などは既にYahooでも伝えている。
この利益相反の問題はこの会見で幕引きをはかるどころか、今後、場合によってはトランプ政権の命運を決めるスキャンダルに発展する恐れさえある。かつてニクソン政権が、ウォーターゲート事件で自壊したように。