インファクト

調査報道とファクトチェックで新しいジャーナリズムを創造します

2018年、新聞は報じるニュースの根拠を明確にせよ

こうした新聞の報道の責任は重い。いわゆる識者とされる人々の発言も影響を受けていると見られるからだ。私がレギュラーコメンテータを務めるテレビ番組で、北朝鮮研究を専門とする大学教授が、「トランプ政権は、金正恩体制の崩壊を目標にしているんですね」などと発言する。

しかしトランプ大統領もトランプ政権も、北朝鮮の核保有を認めないとはしているものの、金正恩体制の崩壊を口にしたことはない。事実は逆だ。トランプ大統領は圧力の必要性を説いてはいるが、金正恩体制の崩壊ではなく、圧力による対話の実現を意識した発言をしている。例えば、韓国国会では、次の様に話している。

「北朝鮮はあなたのお祖父さんが夢見たような楽園ではない。それは地獄だ。しかしながら、我々は、あなたが神と人間に対してきたあらゆる犯罪にも関わらず、あなた方により良い未来への道を提供する」

この「楽園ではない」の部分はテレビでも報じられたが、後半はあまり知られていない。要は、歩み寄りを促しているのだ。少なくとも、「大半は強い口調だった」という印象で語れるほどの単純な内容ではなかった。

勿論、先を見通すことはできない。不測の事態もあり得るだろう。しかし、根拠の不明確な報道に振り回されることは止めた方が良い。読者は新聞を読む際、その情報の根拠があいまいな場合は信じてはいけない。特に、「関係筋」といった表現には要注意だ。

そして、新聞は報道に際して、情報の根拠を明示するべきだ。例えば、「米韓関係筋」とは誰なのか?実名である必要はない。しかし、それが韓国側の人間なのか、米国側の人間なのか?情報源となり得る根拠は何なのか?情報源は1人なのか、それとも複数なのか?もう少し情報を書き込むべきだ。

2017年はフェイクニュースの問題が日本でも指摘された年だった。これはネットで事実と異なる情報が流されることと解されることが多い。しかし、根拠を示さない報道を新聞が報じ続ければ、やがて新聞もフェイクニュースとして扱われるようになるだろう。2018年はその分水嶺だと肝に銘じてほしい。

(yahoo!ニュース個人からの転載記事です。)

Return Top