
石破首相が求めていた日米首脳会談がホワイトハウスで実現し、その後に共同記者会見が開かれた。国内で様々な問題を抱えるトランプ大統領だけに、首脳会談後の共同記者会見でもアメリカのメディアの質問はトランプ大統領に集中することが多い。では、石破首相にとって初の日米首脳会談の後の記者会見はどうだったのか。(立岩陽一郎)
石破首相とトランプ大統領による共同記者会見はアメリカ東部時間の2月7日に行われた。先ずトランプ大統領が発言している。
既に報じられているようにトランプ大統領は日本がアメリカの武器を購入していることを評価、その際に当時の安倍晋三首相との協力関係に触れている。また、経済関係では、アメリカの「クリーンな天然ガス」を日本に輸出することを明らかにしている。またトヨタがアメリカに投資することや、日本でも大きな関心を集めている新日鉄(Nissanと表現)によるUSスチールの買収については「投資だ」と表現して前向きな姿勢を示した。また、石破首相について、「安倍晋三氏と同じようにこの首相は素晴らしい(great)首相になるだろう」とのリップサービスまで披露している。
トランプ大統領の発言の後に石破首相が会見の内容を説明し、その後に記者との質疑となった。アメリカの大統領の記者会見は日本の首相会見のように広報官が出てきて記者を指名することはしない。大統領が自ら記者を指名する。また、「1人1問」などというルールもない。これは第一トランプ政権でも同じだった。こう書くと驚く人も多いだろうが、トランプ大統領は記者会見を楽しむ首脳という印象が強い。例えば、「お前のところはフェイクニュースだ」と非難した場面が世界で報じられたCNNのジム・アコスタ記者(当時、後に退社)に対しても、時折、「ジム、何か質問はないか?」と会見の場で問いかけるなどしている。
そして今回の記者会見だ。トランプ大統領が「質問を受けよう」と言って一斉に記者が手を上げると、「ピーター」と、自ら記者を指名して最初の質問を促している。
この記者も含めて質問した記者は全部で7人。このうち日本人とわかる記者が2人。1人は日本テレビの記者でもう1人は読売新聞の記者だった。他の5人はアメリカ人の記者と思われ、そのうちFox Newsの記者、CNNの記者はホワイトハウスが配信した映像から確認できた。
石破首相への質問が無かったのは3人のアメリカ人と思われる記者とトランプ大統領に石破首相の印象を質問した日本テレビの記者だった。CNNの記者も含めて2人のアメリカ人記者と読売新聞の記者が石破首相に質問している。
二人目のアメリカ人と思われる女性記者は石破首相への質問こそ無かったものの、トランプ大統領に日本の防衛力増強について尋ねるものだった。もう1人、Fox Newsの記者は直接は石破首相に質問していないがLNGの対日輸出解禁ということでトランプ大統領が石破首相に発言を促している。そういう意味では、日本に全く関係ない質問だった記者は最初にトランプ大統領に指名されて質問した記者だけだった。
石破首相への質問は、関税に関するもの、新日鉄によるUSスチールの買収に関するもの、そしてCNN記者からのトランプ大統領に北朝鮮との対話を求めるかというものだった。関税については「アメリカ政府から関税をかけられた場合、報復するのか?」と問われて、「仮定の質問にお答えしないというのが国会での答弁」と述べてトランプ大統領が「とても素晴らしい答えだ。ワオ!彼は対応の仕方を知っている」と喜んで見せたことが日本でも報じられた。
トランプ大統領は異例とも言えるものも含めて、その言動が常に注目を集める。それだけにアメリカの記者からすると、あらゆる会見の場でそれらについて問い質したいというのが本音だ。このため、外国首脳との共同記者会見でトランプ大統領に質問が集中するケースが第一期トランプ政権でも散見された。今回もアメリカの記者の質問は連邦政府機関の解体などトランプ政権の政策に集中していた。しかし、そうした質問をする記者からも石破首相に質問が出ていた。
日米首脳による記者会見で日本の首相への質問がアメリカの記者から出されたことを、良し悪しで語る必要は無い。ただし、アメリカのメディアの日本への関心を示すものとしては、良し悪しは別として注目しておきたい点ではある。