
欧州からの旅行客は旅行消費額が少ないと指摘する声がXで拡散した。中国人の爆買いが批判される一方で、欧州からの観光客はケチだと揶揄するのも不思議な話だが、実態はどうなのだろうか。ファクトチェックした。(馬場玲妃)
対象言説
欧州人まじで金使わんな。
(X、投稿者:すてやん、2024年7月20日)
結論
【ミスリード】
Xに添付されている旅行消費額のグラフでは、欧州が占める割合は小さい。しかし、それは旅行客全体の消費額の「合計」を示している。国によって訪日人数は異なるため、1人当たりの消費額を比較した。すると、欧州からの旅行客の1人当たりの消費額はむしろ高いことが分かった。
問題のツイートは2エンマ大王となる。

エンマ大王のレーティングは以下の通り。
- 4エンマ大王 「虚偽」
- 3エンマ大王 「誤り」
- 2エンマ大王 「ミスリード」「不正確」「根拠不明」
- 1エンマ大王 「ほぼ正確」
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ファクトチェックの詳細
下記の円グラフは環境庁の「国籍・地域別にみる外国人旅行消費額」である。現在はXで使用されている1次速報は見ることができないため、2次速報を確認した。

これを見ると中国や米国、台湾の消費額が多く、欧州は少ないことが分かる。しかし、このグラフはそれぞれの国からの旅行者全員の消費額を合計したものである。
そこで、旅行者1人当たりの消費額を調べるため、観光庁の別のデータ、「訪日外国人の消費動向」(2024年度4~6月)を確認した。以下に費用別にみる一般客1人当たりの旅行支出(図表2-7)と、それを棒グラフにしたものを示した。


このグラフで欧州と他地域と比較すると、欧州からの旅行客の1人当たりの支出は次のようになる。
英国 40万円超
ドイツ 35万円弱
フランス 40万円超
イタリア 35万円超
スペイン 35万円超
因みに、アジアの国や地方で30万円を超えるのはシンガポールだけで、1人当たりの支出を見ると欧州人の方が高いことが分かる。
したがって、「欧州人は日本でお金を使わない」はミスリードである。