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[参院選FactCheck] 検証 消費税(2) 増税分の84%は使途不明か?

[参院選FactCheck] 検証 消費税(2) 増税分の84%は使途不明か?

消費増税が主要な争点となっている2019年参議院選挙。ツイッター上には「参議院議員山本太郎によれば、消費税増税分の84%は使途不明」という内容の投稿が拡散している。同様の情報はほかにもいくつか見られるが、誤情報である。山本氏の事務所に確認したところ、「使い道が不明」と指摘したのは増収分のうち「後代のつけ回し軽減」に使われた部分(約4割)とのことであった。(楊井人文)


ファクトチェックの対象言説

国政調査権を持つ参議院議員山本太郎によれば、消費税増税分の84%は使途不明であり、全額福祉に使われるという政府の説明はデタラメであることが分かっている」(一般人のツイッター7/13投稿、約5000RT=掲載時点)

調査結果

判定(レーティング):

不正確

(レーティングについては、FIJサイト参照)

根拠・理由:

山本太郎氏の公式サイトには、「不透明!サギじゃね?」と題した消費税等に関するパンフレットが掲載されている。

山本太郎公式サイトより。パンフレットの一部抜粋)

そこには、消費税のうち「社会保障の充実にはたった16%しか使われていません」「政府・内閣官房には『充実』以外の内訳を求めていますが出しません」と書かれている。だが、「84%が使途不明」とは書かれていない

わかりにくいが、よく読むと、「充実と安定化で55%ほど」(棒グラフの赤・黄・青の部分)を除いた、約4割の「後代のつけ回し軽減」(棒グラフの緑の部分)を問題視しているように解釈できる。

この点について、山本太郎事務所に問い合わせたところ、担当者より、山本氏が「内訳が不明」と指摘しているのは「後代へのつけ回し軽減」の部分である、との回答があった。

同担当者によれば、「後代へのつけ回し軽減」の内訳について財務省と複数回やりとりしたが、財務省(主計局)からは

これまで安定財源が確保できていなかった既存の社会保障費に充てられております(なお、どの経費にいくら充てられるのかという内訳までは決まっておりません)」

との回答しか得られなかったという。そのため、パンフレットで「使い道は秘密」などと批判したと考えられる。

この財務省の回答は、2013年の増税決定時にとりまとめられた政府資料の表現を踏襲したものだ。この中にも「後代へのつけ回し軽減」について、「高齢化等に伴う増(自然増)を含む安定財源が確保できていない既存の社会保障費」との説明がある。

内閣官房・社会保障改革担当室が作成した資料も、社会保障「安定化」の使途は大きく「基礎年金国庫負担割合1/2」「消費税率引き上げに伴う社会保障4経費の負担増」「後代のつけ回し軽減」の3つに分類している。このうち「基礎年金国庫負担割合1/2」「消費税率引き上げに伴う社会保障4経費の負担増」は、一応、使途として示されたものとみることはできる。

だが、「後代へのつけ回し軽減」は、「社会保障の安定に大きく寄与」という「政府債務の圧縮」効果は説明されているものの、社会保障費への使途が明確になっていないとの指摘も成り立つ(後述の解説も参照のこと)。山本氏はこの点を問題視しているとみられる。

結論:

山本太郎氏が消費増税分の一部分について使い道が明らかでないと主張していること自体は事実である。だが、必ずしも「84%が使途不明」と主張しているわけではなく、増税分のうち約4割に当たる「後代へのつけ回し軽減」の使途を問題視しているから、「不正確」と判定した。

【関連記事】検証 消費税(1) “増収の一部しか社会保障に使わず、7年で4兆円削減”は事実か?


補足説明(解説)

山本氏が「内訳が不明」と問題視した「後代へのつけ回し軽減」とは、いったい何を意味するのか。

8%への増税が実施される際、公表された資料「平成26年度の社会保障の充実・安定化について」(厚労省作成)には、「高齢化等に伴う自然増を含む安定財源が確保できていない既存の社会保障費」とだけ書かれている。

また、2014年5月に行われた財務省の地方説明会(佐賀市)では、次のようなやりとりがあった。

(質問)消費税率を 10%まで引き上げた場合の増収分の使い道として、後代への負担のつけ回しの軽減に7.3 兆円充てるとしているが、具体的にどのように使うのか。
(回答)消費税率を 10%まで引き上げた場合、14 兆円程度の増収が見込まれています。この増収分は、社会保障の充実に 2.8 兆円、消費税率引上げに伴う医療・介護・年金などの給付費の増加に 0.8 兆円、基礎年金の国庫負担割合を 3 分の 1 から 2 分の 1 へ引き上げた分の恒久財源に 3.2 兆円、後代への負担のつけ回しの軽減に 7.3 兆円使用することとしています。社会保障給付に要する経費と消費税収の差額は、他の税収と借金で賄っていますが、借金は次世代に負担が回ることになりますので、この部分に 7.3 兆円を充て、社会保障給付に要する経費と消費税収の差額を縮めることに使用するものです。(太字は引用者)

要するに、社会保障給付の財源不足による新たな借金を軽減するために使われている、という説明である(ほかに、山梨の地方説明会資料も参照)。

ただ、この説明を前提としても、増税による増収分を具体的に何に使ったのかは説明できないのであろうか。

財務省ウェブサイト「消費税の使途」には、平成30年度予算のグラフが載っている。消費税の税収は「増税分5.8兆円」も含めて全額が、社会保障4経費29.1兆円に使われたことを図示している。このとおりであれば、別の政府資料において、増収分のうち「後代へのつけ回し軽減」と説明された部分も、社会保障4経費の何かに充てられた可能性もあるが、これまでの調査では定かでない。

財務省サイトより)

しかも、安倍首相は、今年1月の施政方針演説で、

「八%への引上げ時の反省の上に、経済運営に万全を期してまいります。増税分の五分の四を借金返しに充てていた、消費税の使い道を見直し、二兆円規模を教育無償化などに振り向け、子育て世代に還元いたします。軽減税率を導入するほか、プレミアム商品券の発行を通じて、所得の低い皆さんなどの負担を軽減します。」

と、あたかも債務返済に充てたかのような発言をしている。この発言は、一見すると、従来の財務省などの説明と矛盾するようにみえる。

ニュースのタネは、増税分の使い道について財務省に取材したが、17日夜までに明確な回答は得られていない。

詳細が判明次第、追記または続報したい。(こちらの関連記事も参照)


(注)本文で取り上げた言説とは別問題だが、上に掲載したパンフレットにおける、社会保障費を「この7年間で4兆円削っている」との記載は、要注意である。これだけみると、あたかも社会保障給付額が削減されているとの誤解を与えるおそれがある。たしかに、マクロ経済スライドによる年金支給額の削減などが一定の社会保障費抑制が行われていることは事実だが(しんぶん赤旗参照)、社会保障費全体でみれば増額の一途をたどっており、1人あたりの社会保障給付も増大し続けている(内閣府の資料「社会保障給付の推移」参照)。(こちらの記事も参照)

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