「福岡市が中国の公務員800人規模の受け入れを発表」と題した8年前の記事が拡散し、あたかも福岡市が現在そのような計画を進めているとの誤解が広まった。調べると、福岡市は当時そのような覚書を締結したが、日中関係の悪化で受け入れを実行することはなかった。(楊井人文)
税金の無駄をはるかに超えて、日本侵略を公言するチャイナ共産党の工作員である公人に日本の税金を支払うとは、福岡市終わってます。市民には反対してほしい。
<「福岡市が中国の公務員800人規模の受け入れを発表」と題する記事をシェア>
(2020年9月7日、Twitter投稿)
【ミスリード】 8年前に福岡市が中国公務員の研修受入れの覚書を結んだことは事実だが、実際には受け入れを行っておらず、その計画もない。
このツイッター投稿は、「福岡市が中国の公務員800人規模の受け入れを発表 名目上は『研修』だが…華字メディア」と題するRecord Chinaの記事をシェアしながら、福岡市が中国の公務員に税金を支払うことに反対を呼びかけたものだ。1万人以上のフォロワーを持つアカウントから投稿され、約2000リツイートされた。
だが、シェアされた記事の掲載日は「2012年7月5日」だった。ツイッター投稿では、掲載日に言及せずに、福岡市が最近、中国公務員の受け入れ計画を進めているかのような内容だった。ほかに複数の人がそのような誤解に基づいて投稿し、拡散していた。
2012年に覚書を締結しただけで、実現せず
調べてみると、中国公務員研修の受け入れについて、福岡市は2012年に中国政府と覚書を締結したが、最終的には実施に至っていないことが分かった。2017(平成29)年の福岡市議会定例会で、同市は次のように中止に至った経緯を説明している。
(とみなが正博) よろしくお願いいたします。 最後に、中国公務員の研修受け入れ問題についてです。 平成24年、本市は突如、中国公務員の研修受け入れを発表いたしました。しかし、あれから5年が経過しようとしている今現在までも、その実施には至ってはおりません。 そこでまずは、本市が中国政府と締結した覚書の内容と締結に至った経緯、当時の状況と研修受け入れをやめた理由についてお尋ねいたします。
(総務企画局長・中村英一)…(前略)… 次に、覚書の締結に至った経緯につきましては、平成23年12月に中国国家外国専家局東京事務所を訪問し、中国公務員等の海外研修制度について情報収集などを行いまして、平成24年1月には専家局日本駐在事務所総代表が福岡市を訪問され、その際、福岡市の施策や取り組みについては学べる面が多く、交流を深めていきたいとの意向が示されたものでございます。以降、人材交流及び協力の覚書締結に向けまして事務的に協議を行い、平成24年7月6日に覚書を締結いたしております。
次に、当時の状況でございますが、覚書締結後に尖閣諸島国有化に端を発して中国で過去最大規模の反日デモが行われ、多くの日系の企業や日本人に被害が及ぶなど、日中関係が緊迫した状況でございました。受け入れをやめた理由につきましては、このように想定を超えて日中関係が緊迫化したことから、福岡市として手続を進めていく状況ではないと判断いたしまして、受け入れ窓口を予定しておりました公益財団法人福岡アジア都市研究所は中国国家外国専家局に対しまして研修受け入れ機関としての認定申請を行わないこととしたものでございます。以上でございます。
ー2017(平成29)年6月15日、福岡市議会第3回定例会
つまり、2012(平成24)年7月に福岡市が中国公務員の研修受け入れの覚書を締結したものの、その後の日中関係の悪化により、受け入れは行わないことになった、ということだ。
この議会の質疑で、福岡市は覚書の有効期限が2017(平成29)年7月5日であり、同市長は覚書を延長する考えがないことも表明している。
改めて、福岡市に確認したところ、総務企画局国際部は「中止を発表した後は一度も受け入れを行っていない。現段階では受け入れを再開する計画もない」と回答した。
結論
以上より、中国人公務員の受け入れは2012年に覚書を締結したものの、実行には移されず中止され、それ以降も受け入れは行われておらず、その計画もない。そうした重要な経緯に触れずに現在の計画であるかのように誤解を与えるため、「ミスリード」と判定した。
(この記事は、FIJリサーチャーの日高大氏、InFactインターンの山岸達矢氏、洪果氏の協力も得て作成しました。)