
立憲民主党の原口一博衆議院議員が備蓄米に関するXでの投稿が拡散した。この発言の内容についてファクトチェックした結果、「備蓄米の売り渡し価格5キロ83円というデータはなく、原口氏の発言は根拠が不明だった。
対象言説
家畜用だろう?古古古米。5kg83円のものが何故、2,000もするのか?誰と随意契約したのか?小泉米。

2025年5月29日のXの投稿は、2025年7月14日時点で155万以上の表示、2.7万いいね、9000以上のリツイートを記録している。
結論
対象の原口氏の発言を裏付けるデータは見つからず、原口氏に問い合わせたものの返答はない。このため、発言の根拠は不明と言わざるを得ない。
ファクトチェックの詳細
原口氏が指す古古古米とは、備蓄してから3〜4年程度経過した2021年産の米である。
今年1月、農林水産省が発表した「米の基本指針に関するデータ」が示す「政府備蓄米の運営について」によると、5年間備蓄された米は、飼料用として販売すると書かれている。以下のような図解も掲載されている。
(農林水産省「米の基本指針(案)に関する主なデータ等」より「政府備蓄米の運営について」)

そこで、備蓄してから5年未満の米を家畜の飼料にすることはあるのかについて、農水省の公式ホームページの「ご意見・お問い合わせ窓口」に記載されている問い合わせフォームから問い合わせを行った結果、「100万トンの備蓄水準を維持するために、毎年20万トン程度の新米を買入れし、5年持ち越しとなった同量の米を飼料用に販売して備蓄水準をキープしております。年産構成(20万トン×5か年)に変動がなければ基本的には5年未満のお米を飼料用として販売することはありません」という回答がメールであった。つまり、備蓄してから5年未満の米は「基本的に」という限定ではあるものの飼料として用いられていないという説明だ。「古古古米」、つまり3〜4年程度経過した2021年産の米も家畜用の資料に回されることは、「基本的に」無いということだ。
次に、価格について調べた。「5kg83円のもの2,000(円)もするのか?」という発言も「古古古米」のことを指している。2025年7月、農水省の「随意契約による政府備蓄米の売渡しについて」によると、2021年産備蓄米の売り渡し価格は60キロ10,080円である。そこから計算すると、10,080÷60×5=840。つまり5キロあたり840円となる。
(農林水産省「随意契約による政府備蓄米の売渡しについて」より

昨年同時期の相対取引の価格と小売価格の比率をもとに算出された一般的なマージンで、既存在庫とブレンドしない前提で試算すると、小売価格が2000円程度/5kg(税込2,160円程度)と農水省による「随意契約による政府備蓄米の売渡しについて」に書かれている。したがって、政府備蓄米を取り扱う農水省のデータによると、小売価格は2,000円となっており原口氏の「2000円もするのか」はこれを指していると見られる。ただ、売渡価格については計算値で5キロあたり840円であり、83円とは書かれていない。また、5キロ83円を示すデータは見つからない。少なくとも農水省は、そのようなデータを発表していない。
6月26日に原口氏の事務所に対し発言の根拠を確認するFAXを送り、事務所に電話で回答を依頼する旨の連絡をした。7月15日現在、回答は無いが、回答があり次第、記事に反映させる予定だ。
(山尾侃生,久米彩稀,久門賢心 )
編集長追記
InFactのファクトチェックは発信者を否定したり批判したりするものではなく、あくまでも発信された内容の事実関係を確認するものです。ファクトチェックは完ぺきなものではないことも事実で、原口議員には是非、発言の根拠をお示しいただきたいと考えています。