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拉致問題は前進するか 蓮池透×石丸次郎 対談⑥

石丸:そんな時に、記者の手帳に「家族会の右傾化」というメモを見つけたわけですね。
蓮池:こりゃいかんなと、はたと気づきました。少なくともニュートラルに戻さないと世間の支持はなくなっちゃう、危ないと思いました。

石丸:右傾化に批判的なことを言うと、家族会の中ではどのような反応だったんですか?
蓮池:ダメでしたね。「変なこと言うな」と。そもそも家族会の打ち合わせって、「救う会」の人が必ずいるんですよ。

石丸:被害者家族の皆さんが言いたいのは、家族を取り戻してほしいということですよね。その際に、「北朝鮮にガツンとやってでても何とかしてくれ」という激しい言葉が出て来てしまうのも、家族の思いとして分かるんです。しかし、そのコメントがテレビにことさらに取り上げられて流れると、話されている人は強硬派に見えるだろうし、見ている側も、「そりゃそうだ、ガツンとやらないと。政府は何をしてるんだ」と思ってしまう。「北朝鮮になめられてる」「もっと強硬にやれ」という風潮が2002年から今日までずっと続いてきた。社会感情が政策を縛るようになった側面があったと思います。さらに運動に右翼が入り込んで来たり、政治家が自分の政治集会に被害者家族を連れて行って演説させたり…。家族に対する「無垢な被害者」というイメージは薄くなって、政治性の強い人たち思われていったと思います。一方で、家族が政治利用されていると感じた人も多かったと思います。
蓮池:完全に政治利用されましたよ。いや、いまだに利用されていますね。うちの両親も昨年の衆院選で新潟に安倍さんが来た時に応援に呼び出されました。ああ、まだ利用すんのかと思いました。

石丸:断れないんですか、やっぱり?
蓮池:義理ですかね。安倍さんが選挙公示後新潟県に入って柏崎に来た時に、演説するから弟(薫さん)に来てくれって言われたんですが、弟は「ちょっと行けません」って返事すると、「じゃ、ご両親は?」って言われました。警察とグルになっているんですよ。よく来る地元の警察署の課長クラスの人が電話してきて、両親に「私を目印に来て下さい」と言うんです。行ったら安倍さんが来ていて、演説でも「蓮池薫さんの両親が今日、見えてます」って言うわけです。私が「結局、ダシか」て言ったら、両親も「仕方ないだろ。義理だ、義理」って言ってました。(続く)

<<※中川昭一>>

元自民党衆議院議員、元拉致議連会長。2010年10月に57歳で急死。

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