アメリカン大学での会に話を戻そう。出席者からは、乱れた髪に太いフレームの眼鏡という科学者のような出で立ちと赤ワインを好んだ生前のドナルド氏について心温まるエピソードが語られた。しかし、その誰もが共有していたのは、今月中にも誕生する新大統領への懸念だった。
金融機関取材の時にドナルド氏の上司だったビル・ビューゼンバーグ氏は、「こういう時期にドナルドを失うのは大きい。我々ジャーナリストは次の大統領とロシアとの関係などはしっかりと調査報道しなければならない。ジャーナリストの力が試されていると思う」と話した。
会を主催したのはアメリカン大学でドナルド氏の同僚だったチャールズ・ルイス氏。ドナルド氏の健康上の異変に最初に気付いたのはルイス氏だったという。しかし癌は既に進行しており、手の施しようがなかったという。自ら数々の調査報道を手掛けてきたルイス氏は次の様に語った。
「彼は私の親友であり、データを駆使したジャーナリストとしては彼の右に出る者はいないだろう。心から彼の死を悼みたい。彼とはまさにかつてない規模でデータ処理を実施した調査報道を手掛けようとしていた矢先で、本当に失ったものは大きい」
そして続けた。
「しかし我々はドナルドの功績、素晴らしい人柄をただ偲ぶだけでなく、彼が実践してきたものを更に前に進めていかなければならない。なぜなら我々は今、近年にない民主主義の危機的な状況にいるのだから」