当然、これが事実ではないことは、日本人は知っている。しかし、様々な問題を引き起こすトランプ大統領と好んで付き合っている首脳がいるとは米国では思われていない。
首脳会談が開かれた10日、ギャロップ社の最新の世論調査も大きく報じられた。そこには、米国人に、トランプ大統領が世界の首脳から尊敬されていると思うかと問うた結果が示されていた。
尊敬されていると思うは29%。
尊敬されていると思わないは67%。
ギャロップ社の調査結果はこちら
「尊敬されていると思わない」が「尊敬されていると思う」を上回るのは極めて異例だという。こうした状況の中で、トランプ大統領に無理やり付き合わされる安倍総理というイメージも出てきているのだろう。
●フロリダ滞在と利益相反
もう1つ、トランプ大統領を取材する雑誌記者に尋ねられたのは、「ゴルフにまで付き合わされるということは、日本では問題になってないのか?」
「問題になるどころか、みな大喜びだよ。日本の総理大臣が各国の首脳を差し置いて特別扱いになったと」
彼が言ったのは、安倍総理は大統領の別荘に宿泊するので支払いは発生しないと思われるが、随行職員らはトランプ・グループの施設に宿泊した場合、支払いはどうなるのか?支払いが生じるが、それはこの国で禁止されている外国政府からの大統領に対する利益供与にあたる恐れも出るのだという。
「この問題を日本側に言うのは筋が違うかもしれないが、トランプ大統領をめぐる問題というのは複雑なんだ」
トランプ大統領が自身の経営する企業との公私混同が指摘される「利益相反」の問題。日本側の意図しないところで、日本もこの問題の取材対象に入ったことになる。
●トランプ大統領は理解していた?
翌朝のテレビのニュースでも、安倍総理と一緒にいるトランプ大統領が繰り返し流されている。ホワイトハウス担当の記者がフロリダから中継で、「きょうは2人でゴルフを行う」と話している。
ただ、トランプ大統領と一緒に食事をする安倍総理の映像が流されて伝えられる内容は日米安保でも、日米貿易交渉の内容でもない。
事実上のイスラム教徒の入国制限となっている大統領令が控訴審判決で退けられたこと、そしてそれについての今後の大統領の対応、国家安全保障担当大統領補佐官のマイケル・フリン氏がトランプ大統領の就任前にロシア大使と制裁について話していたとの疑惑、トランプ大統領の長女のイバンカ氏のビジネスへのホワイトハウスの関与の問題などだ。
それらが米国のメディアを賑わすニュースであることは間違いなく、それが安倍総理の姿とともに語られるのは仕方がない。また、それがトランプ大統領の頭の中を支配していることも間違いない。新聞もテレビも、トランプ大統領が記者会見で途中まで同時通訳用のイヤフォンをしていなかった事実に触れることを忘れていない。ワシントン・ポスト紙は、「トランプ大統領が安倍総理の発言を理解していたかは明確ではない」と書いている。