12日、シンガポール時間の午前9時から始まった米首脳会談。米CNNテレビは現地シンガポールにクーパー・アンダーソンやクリスチャン・アマンプールといった著名キャスターらを派遣して生中継で伝えた。その中で、トランプ大統領と金正恩委員長が出会いの場で見せた互いを気遣うような仕草や握手を繰り返したことに驚きを示した。
番組の中で、湾岸戦争などの取材で知られるアマンプールは、「ボディーラングエージ」に注目したと話し、「トランプ大統領は金正恩委員長の腕に触れ、金正恩委員長もトランプ大統領の腕に触れた。そして何度も握手をした。これまで取材をしてきて、こんな場面は見たことがない。驚愕だ」と話した。
また、米国のスタジオから出演したジェイムズ・クラッパー元国家情報局長官は、情報機関のトップとして訪朝した経験などにも触れ、「相手の腕に触れるなどは北朝鮮当局者とのやり取りで見たことない」と語り、金正恩委員長としても異例の行動だったとの認識を示した。そして、「米朝のトップがこうして会談をするとは、想像すらしなかった。トランプ大統領だからできたのは間違いない」と述べ、トランプ大統領を評価した。
このクラッパー元長官はトランプ大統領の政策を厳しく批判してきたことで知られる。
番組には、シンガポール入りしている元NBAスター、デニス・ロッドマンも出演。何度も訪朝し、金正恩委員長と個人的に親しいことが知られるロッドマンは次の様に話した。
「金正恩委員長から、米国の大統領にメッセージを伝えてくれと言われた。その時、彼から、『大統領の話を聞くから』と言われた。それをオバマ大統領に伝えようとしたが、彼は聞こうともしなかった。そしてメディアは私を批判した。そのすさまじさに、私は家に帰ることもできなかった・・・しかし俺は、こういう日が来ることを信じていた」
そう言って絶句。
「そしてこの日が来た。ミラクルだ」
そう言って、涙をぬぐった。
この中継番組の前にアマンプールはシンガポールのリー・シェンロン首相にインタビューしていた。そこで、なぜシンガポールがこの米朝首脳会談のホスト国になったのかと問うていた。
リー首相の答えはシンプルだった。
「東アジアの安定がシンガポールにとっても重要だからだ」
極めてシンプルな答えだが、実はこれが最も重要なことであることは間違いない。
ところが、こうした発言はこの数か月の日本での議論で聞かれた記憶がない。政府だけではない。メディアもそうだ。また、与野党問わず、国会でも、東アジアの安定といった幅広い視点での議論がなされていたという印象は無い。
極めて残念な日本の状況だ。