新型コロナ対策で世界の司令塔的な役割を担うWHO=世界保健機関のテドロス事務局長は8月10日(スイス時間)の定例会見で、今週中には全世界の感染者数の総数は2000万人、死者数は75万人に達するとの状況を語った。感染拡大が続く日本については、日本の取り組みを評価しているとして懸念は示さなかった。(立岩陽一郎)
会見はスイス・ジュネーブのWHOで約1時間にわたって行われ、テドロス・アダノム事務局長の他、危機担当のマイケル・ライアン氏、新型コロナ担当のマリア・バンケルコフ氏らが出席した。
この会見でテドロス事務局長は次のように話した。
「今週、新型コロナの感染者数は2000万人に達し、死者は75万人に達する。この数字の背後には、大きな痛みと苦しみがある。どの命も失われてはならない」
そして、「希望も出ている」として、どの国、地域、都市、町のどこでも、感染状況を好転させることは可能だと述べた上で、強力なリーダーシップと新たな措置を受け入れる市民の取り組みが必要だと述べた。
更に、「メコン地域の一部の国、ニュージーランド、ルワンダ、そして多くの島国を横断するカリブ海と太平洋地域は早期にウイルスを抑えることができた」と各国で状況が改善していることを強調し、中でもニュージーランドを「世界的な模範」と評して同国のジャシンダ・アーダーン首相の取り組みをたたえた。
ルワンダについては、「強力なリーダーシップ、国民皆保険、明確な公衆衛生についてのコミュニケーション」が成果につながったと語った。その際、ルワンダでは新型コロナの治療は無料で受けられると紹介した。
また、フランス、ドイツ、韓国、スペイン、イタリア、イギリスでも政府と市民の取り組みで改善が見られていると語った。
会見では、6000人以上の死傷者を出し30万人を超える人々が家を失ったベイルートの状況に懸念を示し、WHOとして新型コロナへの対策などとして1.7億ドル相当の防護服を輸送したことを説明した。
この後行われた質疑応答で、感染者が再度増え始めている日本の状況について記者から質問が出た。これについてライアン氏が、「日本ではすでに2~3ヶ月前から数多くのクラスターを調査し、クラスターの発生に関連したリスク行動を特定してきている」として日本の取り組みを評価した。ライアン氏は日本について懸念は示さず、今後推移を見守る姿勢を示した。
この記者会見の内容はWHOのwebサイトで全文を読むことができます。
インファクトはFIJの新型コロナ国際ファクトチェック・プロジェクト(日本財団などが支援)に参加しており、この記事の作成にはFIJの伊藤友登リサーチャーが協力している。