8月24日にスイス・ジュネーブのWHO本部で会見で、WHOなどが進めている新型コロナのワクチン開発の国際協力の枠組みであるCOVAXファシリティで、現在9種類のワクチンが開発中であることを明かした。(立岩陽一郎)
会見は8月24日にスイス・ジュネーブにあるWHO本部で各国のジャーナリストとオンラインでつないで行われ、テドロス・アダノム事務局長やマリア・バンケルコフ健康危機管理プログラム責任者らが対応した。
この中でテドロス事務局長は、WHOが進めている新型コロナのワクチンに関する国際共同開発の枠組みであるCOVAXファシリティへ172カ国が参加をしたことを明らかにした上で、「現在は9種のワクチンがプログラムのもとで開発中であり、さらに9種のワクチンが加わるかどうか評価中だ」と述べた。
テドロス事務局長はワクチンの開発と独占を主要国が行うワクチン・ナショナリズムが起きつつあるとの懸念を示してきた。テドロス事務局長は、このCOVAXファシリティーズについて、「このプログラムは開発に於ける各国のリスクを減らすだけでなく、将来ワクチンの価格を低くするため」と説明し、「国際的なワクチンの開発競争はワクチンの価格を跳ね上げる可能性があり、ある少数の国だけがワクチンの供給を受けることでパンデミックは長引くだろう」と指摘して、更に多くの国がこの枠組みに参加するよう求めた。
COVAXファシリティはWHOが ワクチンと予防接種のための国際協力体であるGAVI と新型コロナのワクチンの公平な普及のために立ち上げた仕組みで、2021年の終わりまでに最低でも2億本の安全で効果的なワクチンを調達し各国に一定の割合で提供することを目指している。日本は参加に向けた意思を示しているが、アメリカ、中国、ロシアは参加に前向きではないとされる。
続いて行われた記者との質疑で、ロシアが開発したワクチン開発したとするワクチンについて、WHOとしこのワクチンを推奨するのかとの質問が出された。これについてWHOの主任科学者であるソーミャ・スワミネイサン氏は、「(ワクチンの)安全性は長期的に評価する必要がある、なぜなら後々にしか表れない副作用があるからだ。こうした理由からワクチンが認証されるかどうかは、臨床試験が基準や規則に従い実施され、専門家によりデータ分析がされているかが重要だ」と述べた。そして、「ロシアの専門家に対して、その効果や安全性に関するデータを要請した」と明かし、今の時点ではWHOとして評価はできないとの立場を明確にした。
またアメリカ政府が、新型コロナから回復した元患者の”血しょう”を用いる治療に緊急使用許可を与えたことについて、スワミネイサン氏は、「この治療法については過去100年間に遡りあらゆる感染症対策として使われてきたが、このウイルスへの治療としては、今は分析が始まったばかりだ」として論評を避けた。
インファクトはFIJ新型コロナ国際ファクトチェック・プロジェクトに参加しており、この記事の作成にはFIJの伊藤友登リサーチャーが関わっています。