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【日本学術会議問題】加藤官房長官会見(10月5日)

加藤勝信官房長官 定例記者会見(10月5日午後)

(記者)
読売新聞のヤマザキと申します。日本学術会議の関係でおうかがいいたします。
今日野党側なども含めてですね、推薦者全員を任命しなかったことで学問の自由を侵害したとの指摘をしている方々もいらっしゃいます。
この指摘について、政府としての立場を改めてちょっと整理してお聞かせいただきたいんですけれども。

(長官)
あの、これまでも申し上げてるように、そもそも学問の自由ということに対する、どう関連してるのかというのがあります。
で、一般的にはですね、研究開発の自由であったり、あるいは大学自治ということが一般的には言われているというふうに承知をしているところであります。
当然そうした学問の自由、それからあわせて午前中の会見でも申し上げましたけど、憲法15条におけるですね、公務員の選任に当たっての国民主権等々の憲法規定もある中で、これはそれぞれの法律は当然そのもとに置かれているわけでありまして、それを踏まえて私どもはこれまでも運用してきたところでありますし、鋭意これからもその立場で運用していくべき、そしてその中で、政府としてはその責を果たしていきたいというふうに思います。

(記者)
関連で読売新聞です。ヤマザキと申します。
この件に関して1983年の国会答弁でですね、首相の任命が形式的なものとされました。
その後、制度改正等もあってですね、この制度見直し等のタイミングで形式的だった任命権というものが実質的になったというふうな理解をされているんでしょうか。

(長官)
いやですから、それは最初のスタート段階から、いま申し上げたように、憲法の規定のもとに、こうしたものが憲法15条の国民を選定し、これを罷免することは国民固有の権利である等のですね、憲法規定、当時から当然あるわけですし、そのもとで法律はなされているわけですから、あくまでもその解釈というのは、その憲法の下において、それを踏まえた解釈がなされてきている。
その解釈はいまでも、われわれ同じように解釈と、そういう認識で運用させていただいていると、こういうことであります。

(記者)
読売新聞のヤマザキです。
その当時1983年の答弁をしたときも、この今回の、いまこの時点においても、実質的な任命の是非に関する権利というのは内閣に属すると、そういう整理をされているということでよろしいでしょうか。

(長官)
日本学術会議の会員はまさに、午前中も申し上げましたけれど、特別職の国家公務員でありまして、憲法第15条第1項の規定から明らかなように、公務員の選定、罷免権、国民固有の権利であるという考え方からすれば、任命権たる内閣総理大臣がその責任において任命するものであるということ、そこはこれまでも変わってきていません。
しかし一方で、この法律上、学術会議の推薦に基づく、その前は選挙でしたけれども、推薦に基づいて任命をするということでありますから、そうした構図の中で、いま申し上げた憲法との関係を踏まえて、これまでも対応してきたということでありますし、そこが変わったというわけではないということであります。

(記者)
朝日新聞のキクチです。関連でおうかがします。
先ほど官房長官は、憲法の規定は当時からあってそのもとで法律がある、つくられていると。
午前中の会見で、構造的な仕組みそのものを変更しているわけではないと述べられていますが、ここで言う構造的仕組みとは、いまおっしゃった憲法の規定ですとか、そのもとに法律がつくられたということを指していらっしゃるのか、それとも違うご認識で構造的と指されているのか。

(長官)
いや、そういうことを申し上げたつもりであります。
午前中の会見で申し上げた趣旨はですね。

(記者)
関連でおうかがいします。
いまも質問に出ましたが、83年の政府見解自体は実質的に首相が会員の任命を左右することは考えていないというものです。
いま官房長官おっしゃるように、構造的な仕組みが変わっていないとしても、少なくとも83年当時よりは首相の任命の裁量権というのは拡大してるのではないかなと思うんですけども、そういったことは、そういう指摘は当たらないのでしょうか。

(長官)
いやそれは、ですから先ほど申し上げた、同じような考え方、方針のもとで対応してきているところでもありますし、基本的にこの法律上ですね、学術会議からの推薦の中で任命をしていくということ、これは何ら変わっていないということであります。

(記者)
重ねておうかがいします。朝日新聞のキクチです。
こうした法的解釈については議論があるのかもしれないんですけれども、少なくとも任命の仕方について、政府の長年の方針が変更されたということは事実だと思うんですけれども、そうしたことは事実に当たらないんでしょうか。

(長官)
その、どこをもって事実とおっしゃっているのか、確かにこれまで、推薦された中で任命を、その範囲の中で任命をしてきているわけでありますけれども、これまではぴったり一致をしてきた、今回はそうではないというところだけ見たら、おっしゃるとおり現象を見たらそうでありますけど、そこは前からも申し上げてきてる基本的考え方は一緒であって、たまたまそうした、こちらとしての対応の結果が、ずれがあるということというふうにご説明をさせていただいたというふうに思います。

(記者)
東京新聞のムラカミです。関連しておうかがいいたします。
2018年に行われた、先ほど午前の会見にもありました、推薦と任命に関する整理の件でおうかがいいたします。
午前の会見時では、関係法令に基づき、内閣府の日本学術会、えー、日本学術会議事務局において検討がなされている、検討を早急にさせた上で対応したいとのことでした。
ただいま行っている検討でなくて、あくまでこの2018年、そのときの、その時点での整理された内容というのは、どういった内容だったんでしょうか。

(長官)
まず、そこで検討と申し上げたのは、そこで書かれてる、まさに資料そのものの提出を含めて、どういう形でお出しをすべきなのかということがいま検討されているという意味で申し上げたというわけで、いま中身そのものを検討しているわけではありません。
いまそれはご質問のとおりだというふうに思います。
したがって、いま中身を教えて、示してほしい、あるいはその資料を出してほしいという、こういった要望については、いま事務局のほうでその対応を検討させていただいておりますし、できるだけ速やかに答えを出していきたいということであります。
それから、内容についてご質問がありました。
私もここで、たしかえー(沈黙)、推薦どおり任命しなければならないというわけではないという言い方をたしかご質問に対してさせていただきましたけど、まさに憲法第15条第1項の規定に明らかにされているとおり、公務員の選定、任命権が、国民固有の権利であるという考え方からすれば、任命権者たる内閣総理大臣が推薦のとおりに任命しなければならないというわけではないという趣旨の整理がその中でなされていたということを踏まえて、私から数日前、先週だったと思いますが、答弁をさせていただいたということであります。

(記者)
東京新聞のムラカミです。今のお話に関連しておうかがいします。
そうしますと、公務員の選定、憲法15条の規定に基づき任命権者が推薦のとおり任命しなくてはならないというわけではないとの趣旨という話だったかと思いますが、そうしますと、この日本学術会議法のですね、26条を見ますと、これは会員が不適当な行為があったときを定めてますが、それに、そこの条文においては日本学術会議の申し出に基づき会員を退職させることができるというふうに書かれています。
つまり、この法律において日本学術会議の申し出なしには会員を辞めさせることはできないということになるわけですけれども、それに照らすとこの7条の任命について、総理の判断は日本学術会議の推薦に拘束されるとも読めるようにも思いますが、ここの2つの26条と7条の整合性については政府はどのようなご認識でいらっしゃいますか。

(長官)
あれ、それはそれぞれ任命、免職の必要な手続きを規定しておりますから、総理は任命に当たってですね、日本学術会議から推薦された者以外の推薦は任命はできないという意味において、同じ、そこは同じということも言えるんじゃないんでしょうか。


(記者)
日本テレビのアマノです。
学術会議の件に少し戻ってしまうんですが、現状6人が欠員になっていると思うんですけれども、残りの推薦いつ受けるかというスケジュール感、もし決まっていれば教えていただきたいのと、次回もそのまま推薦者が任命されない可能性もあるという理解でよろしいでしょうか。

(長官)
あの、欠員についてはこれまでもですね、当然ながら学術会議側の推薦を受けて任命するというこうした仕組みで対応していくということになります。
それに対するどうかということを予断を持って申し上げるのは差し控えるべきだと思いますが、基本的に補充であろうと、こうした定期的な任命であろうと、基本的な考え方は一緒だということであります。

(記者)
北海道新聞のイシイです。学術会議関連についておうかがいします。
先ほどの1983年の政府答弁のお話出てるんですが、いまのお話をうかがってると、菅政権としては1983年の政府答弁で示された認識は採用しなかったという、そういう理解でよろしいんでしょうか。

(長官)
どういう意味でしょうか。

(記者)
つまり任命は形式的なものだという1983年の答弁もあるわけなんですけども、菅政権ではそういう答弁は採用せずに今回判断したという。

(長官)
いやいやそういうことではなくて、その答弁も、先ほど申し上げた憲法15条等々のもとにおいて法律が提案され、それに基づいて答弁されているわけですから。
したがってその構造上ですね、憲法のそうしたものを受けた、踏まえた答弁であるという、これは当然のことなんだろうと思います。
そこをもう一度整理をして申し上げているのがいまの構造的なことが一緒だということでありますから、そこは何ら当時といまと、その、は変わりはないということであります。


(記者)
東京新聞のムラカミです。もう一度日本学術会議の件でおうかがいいたします。
先ほど憲法がほかの法律に優先するとの旨のご説明をいただきました。
憲法にはその15条とともに23条には学問の自由が書かれていて、この学問の自由について先ほど大学の自治も含まれるというふうにご説明を冒頭いただいたかと思います。
大学の自治の内容としては、その人事における自治というのも含まれていると思いますが、そうしますとこの、日本学術会議においては、この人事における自治というのは全面的に認められるものではなくて、例えば、その憲法23条よりもこの15条のほうが優先するというような、そういったようなご認識になるんでしょうか。

(長官)
いやですから先ほど申し上げたように、あるいは午前中の会見で申し上げたように、日本学術会議の会員の皆さんは特別公務員なんですね。
したがって、当然15条の規定もかかってくるわけであります。
それから、その組織そのものは内閣総理大臣の所轄に属する行政組織でありますから、それに係る憲法の規定もかかってくる、そしてもちろんおっしゃる学問の自由というのもあるわけであり、それ、そうした中で法律が作られ、答弁がなされ、運用がなされてきた、それはこれまでも、今日も変わるものではないということを申し上げているわけであります。


2020年10月5日午後、首相官邸

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