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【危機の東アジア】中国で起きていること④ 私のためにどうか生きていて

【危機の東アジア】中国で起きていること④ 私のためにどうか生きていて

中国で何が起きているのか?日本テレビの中国総局長などを経て現在も中国にとどまり取材を続けるインファクトの宮崎紀秀エディターが掘り下げるシリーズの4回目です。(宮崎紀秀)

2015年7月の一斉拘束後も、人権派弁護士への圧力は、形を変えて続いた。数々の冤罪事件にも関わってきた著名な人権派弁護士である李金星は、2019年8月、弁護士資格を取り消された。SNS上での発信が問題視されたという。

李金星は、資格をめぐる聴聞会が終わった後、「彼らは私を懲罰する理由を取り上げ、私は懲罰されるべきでない理由を述べた」と話していたが、その時点ですでに結果は出ていたと同然だった。駆けつけた支援者の前で「私の資格はきっと取り消されるでしょう」と笑っていたが、彼の弁護士資格の取り消しが決定されたのは、その夜だった。

SNSを出す理由も今の制度を攻撃するため、法律を攻撃するためでもない。ただ案件をより公平、公正に解決できるようにするためである。しかし、中国の現状では、そのような主旨でも反共産党、反社会主義に決めつけられてしまう

李金星は、問題とされた発信そのものはたいした内容ではないが、資格を取り消すための理由は何でも良かったのだと断言する。政治犯の弁護も引き受けてきた李金星は、当局にとっては確かにやっかいな存在であったが、彼自身もどこでレッドラインを踏んだかははっきりしていない。

自分のどの言葉が、どの部門、どの官僚を怒らせたかは分からない。だが、言えるのは、私が資格を取り消される最後の弁護士ではないということ。もちろん私が、最後であって欲しい。なぜなら、公正な司法環境がないのであれば、弁護士だけではなくて、ビジネスマン、政治家、市民、全ての人が安全ではないからだ

弁護士の一斉拘束からまもなく3年を迎えようとする2018年7月8日。李文足は、北京にあるEU・ヨーロパッ連合の代表部で開かれた人権問題に関するイベントに参加した。写真はその時のものだ。大勢の前で挨拶をした李文足は、少々緊張しているようだった。その場で、彼女に今、何を考えているかを尋ねた。

国際社会、海外メディアが関心を持ち続けてくれなければ、709事件は今のように注目されなかったでしょう。今、一番強く思っているのは、私たちに注目してくれる全ての人に感謝の気持ちを伝えたい

夫を待ち続けて3年。その月日を経て辿り着いたのは、周囲への気遣いと感謝の言葉だった。

その夜、彼女は夫にあてた手紙をSNSに載せた。

結婚して6年。離れて3年になります

夫と最後に別れた日を毎日思い出しては、ずっと後悔しているなどと切ない心情が綴られていた。それはまるで片思いの相手に書いた恋文だった。その読み手に届く術のない便りは、こう結ばれていた。

あなたのために、私はどんな困難も恐れません。だから、あなたも私のために、どうか生きていてください

その思いが通じたのだろうか。この4日後、李文足は嬉しい知らを受けた。ある弁護士が王全璋と面会できたというのだ。健康や精神状態に、問題はないという。

夫は生きている。

(続く ⑤は11月の掲載となります)

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