加藤勝信官房長官 定例記者会見(10月6日午後)
(記者)
共同通信のカサイです。日本学術会議について質問いたします。
政府は学術会議の推薦どおりに任命する義務は首相にないとする内閣府見解をまとめた2018年11月作成の文書を明らかにしました。
文書では、首相は人事を通じた一定の監督権行使ができるとしておりますが、当時、あの、首相の任命権を明確化しなければならなかった理由についてお聞かせください。
(長官)
あの、当時、その当時、日本学術会議に関していろんな議論が学術会議と政府の中で、あるいは事務局との間である、これはよくあることだと思いますけれども、そういった中でいろんな議論を整理する必要があるということで、いまのような取りまとめがまとめられたんではないか、すいません当時私が見てたわけじゃないんで、若干推測を込めて申し上げますが、そうではないかというふうに思います。
(記者)
関連しておうかがいいたします。共同通信のサカイです。
2011年作成の文書ですが、1983年の政府答弁が触れられていませんが、改めて83年政府答弁との整合性についてお聞かせください。
(長官)
この文書は、えー、憲法第15条第1項の規定に明らかにされてるとおり、公務員の選定罷免権が国民固有の権利であるという考え方からすれば、任命権者たる内閣総理大臣が推薦のとおり任命しなければならないというわけではないといった考え方を確認した文書であります。
え、昭和53、あ失礼、58年の国会答弁も当然現憲法下のもとであります。
このような前提の元でなされたものであります。
平成30年の法制局文書と同じ考えに立ってるというふうに認識をしております。
(記者)
NHKナガオカです。学術会議についておうかがいいたします。
今日の整理の中では内閣総理大臣は直接にその任命権を行使するため、任命すべき会員の数を上回る候補者の推薦を求め、その中から任命するということも否定されないと考えられるとありますが、現在政府としても会員の数以上の推薦を求めることはできるという認識でしょうか。
また、今後そうした方針を基に学術会議に働きかけていくお考えはありますでしょうか。
(長官)
まず推薦する候補者の数そのものは日本学術会議で判断されるものというふうに承知をしております。
一方で、こうした課題、問題も含めて、日本学術会議と政府がいろんな機会にこれまでも意見交換をしてきたというふうに思いますし、また今後とも必要なコミュニケーションを図っていく必要があるというふうに思います。
(記者)
NHK●●です。
昭和58年の参議院の文教委員会で、政府委員の手塚康夫総理大臣官房総務審議官が学術会議の推薦制について以下のように答弁してます。
ちょっと長くなるんですが、引用させていただきます。
「何か多数推薦されたうちから総理大臣がいい人を選ぶのじゃないか、そういう印象を与えているのじゃないかという感じがしてまいったのですが、研連から出していただくのはちょうど210名ぴったり出していただくということにしているわけでございます。
それを私のほうに上げてまいりましたら、それを形式的に任命行為を行う」
以下略ですが、この答弁では会員数ちょうどの推薦数、推薦者数が出されることを前提としているように見えます。
多数の推薦者から総理が委員を選定することについて否定的ですが、先ほどの整理との整合性についてでしょうか。
(長官)
いやその場合のちょっと、その、その文章きちんといま聞いただけでありますけれども、その多数とおっしゃってる意味の問題もあるんだろうと思います。
もちろん推薦、それに基づいて任命していくというスキームでありますし、それについて考え方は基本的にお配りをさせていただいた2018年度の文書の中で明らかにされているということ、それは現在の、おー、もそうでありますけれども、憲法の規定等々踏まえた整理がなされてるということであります。
その前提となるものは、当時と今日とは変わってはない。
当然その中において必要な説明はされているんだろうと思います。
(記者)
朝日新聞のキクチです。よろしくお願いいたします。
関連でおうかがいいたします。
今回内閣府が公表している文書は、2018年の内閣法制局との協議を整理したものだと思います。
この文書には、あの、質問にも出ていますが、83年の国会答弁との整合性についての記載、言及ありません。
実際の協議時にこの国会答弁との整合性が協議の議題になっていないのかどうか、仮に議題となっていても文書を整理する際にこうした記載を落としているのかどうか、事実関係をお願いします。
(長官)
その頃、具体的にどういうやりとりをされたのかということには承知をしておりませんけれども、当然この間のさまざまなやりとり、議論等を含めた上で整理がなされているというふうに思います。
(記者)
東京新聞ムラカミです。2018年作成の文書についておうかがいいたします。
この文書の中では併せて会員を退職させることができる不適当な行為について書かれていて、それが名誉を汚辱するような行為、例えば犯罪行為等が想定されているとも書かれています。
この法律の中の整合性からして任命においても拒否できる選択の幅というのは、この不適当な行為が、行為などがあった場合と考えられるのではないでしょうか。
もしそうでないとしたら、どういう場合はこの任命の拒否、任命をしないということができるのでしょうか。
(長官)
いやそれは別々の条立てで、条文立てですから、それを一緒にむしろ解釈することが適切なのかということだと思います。
ご指摘の26条には不適当な行為があるときは日本学術会議の申し出に基づき、当該会員を退職させることができると書いてあります。
要するに1回決めた方を退職させるためには、こういうプロセスが必要だと。
それから第7条と、それから第17条においては、日本学術会議の中から推薦をいただいて、内閣総理大臣が任命すると、こういう違う形でつくられているわけであります。
任命に当たっての考え方はこれまでも申し上げてきたように、学術会議の設置目的を踏まえて、総合的俯瞰的に運用されていること、それら、という観点から私どもも判断をさせていただいた、こういうことであります。
(記者)
東京新聞ムラカミです。同じく2018年文書についておうかがいいたします。
この文書の中で、憲法23条の学問の自由を保障するために大学の自治が認められているというところでの文部大臣による大学の学長の任命とは同視することはできないというふうに書かれています。
学術組織が人事を独立して行うという意味においてこの日本学術会議には、大学の自治とは同等の同じ人事における独立というのは存在しないという、そういったご認識になるんでしょうか。
(長官)
あの、まさにそこを注意深く、注意深くというか、読んでいただければ、あの、国の行政機関に属する公務員の任命だ、というのと、それからあとそこには司法権、これは憲法上独立が保障されている、裁判所の関係、そして憲法23条に規定された学問の自由を保障するための大学自治と、これ別々に説明されているわけでありますから、本件についてはいま申し上げた国の行政機関に属する国家公務員あるいは国の行政機関たる日本学術会議、当然それに対して15条が適用されていくという、そういったことを書いたものだというふうに認識をしております。
(記者)
東京新聞ムラカミです。
そうすると、その任命に当たって先ほど総合的、俯瞰的に運用されているという観点という、これまでご説明いただきました。
この2018年文書見ますと、まさに先ほどから質疑ありますように、推薦のとおり任命すべき義務があるとは言えないとの見解に立っているということだと思います。
そうすると今回の6人の方なんですけれども、それぞれ小林秀雄賞でしたりとか、サントリー学芸賞など受賞されてたりとか、もしくは専門分野の著書なども書かれていたりなどして、一般的にも著名な方というのが含まれていると思います。
功績は顕著だと思うんですけれども、そう考えると任命からなぜ外したのかというのがやはり先ほどの総合的俯瞰的に運用されているという観点からと、に照らしたとしても不可解になるんですが、任命に当たっての今回の総理の判断というのは妥当だったと言えるんでしょうか。
(長官)
あの、まさに先ほど申し上げた観点に立って判断をさせていただいた、それから個々の任命の方についてのコメント、これについては控え、これ本件だけではなくて、他の事例においても控えさせていただいているということで、こうした説明をさせて、その中において必要な説明をさせていただいているということであります。
(記者)
毎日新聞サトウです。関連でおうかがいいたします。
2018年作成の文書についておうかがいいたします。
この文書の中には、任命に当たって、首相は日本学術会議からの推薦を十分に尊重する必要があると考えられると記されております。
今回の6人の任命を見送った人事は推薦を十分に尊重した結果だと言えるとお考えでしょうか。
(長官)
もちろん、基本的に日本学術会議からの推薦、それをもとに任命を行うわけであります。
そして、もちろん推薦されてきているということ、それらもよく踏まえながら、しかし国は国としての立場において、必要な、先ほど申し上げた総合的な俯瞰的な観点に立って同会議が運営されていくこと、そうした観点から任命をさせていただいてるということであります。
(記者)
毎日新聞サトウです。重ねておうかがいいたします。
そうしますと十分に尊重という意味は、学術会議が推薦した人の中から政府が任命すれば、それで十分に尊重したということを満たしたと言えるというお考えでしょうか。
(長官)
あの…、学術会議から推薦をされてきた、そしてそれについていろいろコミュニケーションをされている、そうしたことをしっかり我々は踏まえた上で、私たちは私たちの判断をしていくということが大事なんだというふうに思います。
(記者)
読売新聞のヤマサキと申します。関連でおうかがいいたします。
1983年の国会審議で、政府側の形式的任命にすぎないという趣旨の答弁についてなんですけども、この形式的任命とはどういうふうに定義づけているのか、その認識をお聞かせください。
(長官)
先ほどから説明をさせていただいておりますように、その、憲法第15条第1項の規定ということで、まさに公務員の選定罷免権、これは国民固有の権利であり、またそういった意味において内閣総理大臣がその責を持って任命をしていくという、こうした憲法上の規定の中においてですね、そうした構造の中において、この法律によって推薦に基づいて任命をするという形になってるわけですから、まさにその推薦を踏まえて任命をしていくと、まさにそこをそうした形で表現をされていると。
しかしその言ってる意味は、この文書、この文書というのは2018年の文書であるように、出てきたものをそのまま全部認めるということ、そこが推薦どおりに任命しなければならないというわけではないという、そうした解釈というか、そうした考え方が示されているわけでありますけれども、その考え方は従前からあった考え方を踏まえているということであります。
(記者)
読売新聞のヤマサキと申します。関連でおうかがいいたします。
今日公表された文書では、5ページ目の上段部の注釈部分なんですけれども、「形式的任命と言われることもあるが」というふうな記述があって、その後、裁判官ですとか大学の学長についての記述があります。
この文書を読むと、「形式的任命と言われることもあるが」という記述があることから、形式的任命をある意味否定してるかのような読み方ができるんですけれども、形式的任命というのは83年答弁とこの文書では、同じような認識で引き継がれているのでしょうか。
(長官)
すみません、そこはどこを読んでおられるのでしょうか。
(記者)
下のページ番号では5と書かれているページのところの、上段部の米印のところですけども。
(長官)
ですから、そこはこれまでも形式的任命という説明が当時なされてきたというところでありますけれども、しかしもともと国の行政機関に属する国家公務員の任命ということでありますから、それは任命するという国家、先ほど申し上げた憲法15条の規定、それを踏まえて国が国の責任においてしっかり行っていく必要はあるという、そのことを書いているということじゃないんでしょうか。
(記者)
北海道新聞のイシイです。学術会議の関連でおうかがいします。
2018年の文書で、ま、あのー、1983年の国会答弁からかなりその認識が変わってるように見えるんですけど、その2018年で文書を作った段階で国民に公表しなかったのはなぜなんでしょうか。
(長官)
あのそれはですね…、これまでのまさに確認をしてきたということで、新たな解釈をしてるわけではありませんので、単にこれまでのことを確認してきたという文書でありますから、あの、もしこれが解釈が変わるとかいうのであれば、それはそうした公表というのがあるんでしょうけれども、そういった形じゃなかったので、直ちに公表する必要はなかったと当時判断したものだというふうに思います。
(記者)
北海道新聞のイシイです。
解釈は変更してないと思うんですけど、83年と比べるとかなり認識的には整理されて変わったという印象を受けるんですけど、それでもやはり公表する必要はないという考えで…。
(長官)
かつ先ほど申し上げた解釈に変更を加えたものではないということ、それから行政機関、法制局と日本学術会議の事務局という内部において考え方の確認をあくまでもした、こういう文書でありますから、そういったことも含めて、直ちに公表する必要はないということであります。
ただ、今回こうした議論もあったので当時の文書を提供させていただいたということであります。
(記者)
産経チダと申します。関連しておうかがいします。
学術会議の候補者は、選考委員会が候補者名簿を作成し、幹事会で候補者を決定して、総会で了承する仕組みになっています。
候補者を推薦する際の基準というのは、あの、具体的にどういったものがあるのでしょうか。
また、その推薦理由なんですけれども、政府にも示されているのでしょうか。
(長官)
まず、日本学術会議法上、優れた研究または業績がある科学者のうちから、会員の候補者が選考される、ということになってるわけでありますから、それにのっとって学術会議が実際候補者を選定してるというふう、推薦を決定しているということであります。
で、具体的なやり方は、これまで申し上げましたけれども、日本学術会議の会則で、いまおっしゃったようなこと含めて決めて、それにのっとってやっておられるということであります。
あの、ちょっと具体的にどういう形で推薦書が政府に出てくるか、ちょっと私、現物見てないので、そこはちょっと後で確認して事務局から答弁をさせていただきたいと思います。
(記者)
続けておうかがいします。産経チダと申します。
学術会議には年間約10億円の予算が計上されておりますが、国民主権の観点からどういうふうにガバナンスするのが適当というふうに考えていますでしょうか。
(長官)
そのガバナンスという、予算ということについて言えばですね、これはほかの行政機関と同様に、予算として閣議決定、予算案として閣議決定がなされ、国会において審議され、そしてまた決算等について、それぞれ規則、法令に基づいてですね、チェックがなされてきているいうことでありますから、それは同じような対応がなされているということであります。
(記者)
東京新聞ムラカミです。
先ほどの形式的任命のところで確認をさせてください。
2018年文書にはですね、先ほどご説明いただきましたように、国の行政機関に属する国家公務員の任命であることからというふうに、説明が書かれています。
その形式的任命、最初に出てきたのが83年の中曽根総理の答弁でしたけれども、この83年当時というのは、そうしますと、国の行政、日本学術会議というのは国の行政機関に属して、また国家公務員の任命ではなかったということになるんでしょうか。
(長官)
はい、ごめんなさい、最後のところ聞こえなかった。
(記者)
83年当時は、日本学術会議は国の行政機関であったのかなかったのか、また国家公務員の任命であったのかなかったのか、というところを確認させていただき…
(長官)
83年っていうのは…
(記者)
中曽畝総理が答弁をした当時、中曽根総理が…
(長官)
要するに、その当時の答弁はまさに選挙制から任命制に移ってきたわけでありますから、選挙制の段階では任命という行為はなかったということであります。
で、任命行為になってから、まさにこういった仕組みになってきた。
(記者)
そうしますと、その83年の当時、もう一度同じことをおうかがいしますが、えっと、日本学術会議は国の行政機関であったんでしょうか、なかったんでしょうか。
また、その特別職の国家公務員であったんでしょうか、なかったんでしょうか。
(長官)
いや、もともとが行政機関であります。
ただ、当時、選挙という形で選ばれていたということであります。
それ以前、その当時、議論する前はですね。
そしてその後は推薦に基づいて任命すると、そこは仕組みが変わっているということであります。
(記者)
ニコニコの七尾です。
質問変わりまして、日本学術会議の新会員候補のうち6人の任命されなかったことにつきまして、連日ですね、日本学術会議や一部メディアから理由を説明すべきだという声が上がっております。
ユーザーの素朴な疑問なんですが、国民の生活の場面でみますとですね、たとえば公務員試験でも一般企業などにおきましても、例えば最終面接で採用が決まると言った場合に採用しなかった理由を明らかにされたという例はあまり聞いたことがないわけです。
これはあくまで一般社会の話なんですけれど、ひるがえりまして、これまで政府の人事でこれまで任命しなかった理由を明らかにした例はあるんでしょうか。
任命しなかった詳細、具体的な理由を実際これ、明らかにできるものなんでしょうか。
(長官)
まずあの、個々の選考過程、まさに人事についてですね、政府としてはコメントは差し控えるということでこれまでも取り組んでまいりました。
あのー、当然人事に関することでありますからお話しできることには限界がありまして、その中でのできる限りの説明を行ってきたというのは、これまでもそうしたことでやらせていただいたところであります。