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【政治と金の研究③】菅総理の 自著の元本は団体経費で出版

【政治と金の研究③】菅総理の 自著の元本は団体経費で出版

菅総理の政治資金収支報告書から見える菅総理の政治と金。内容の削除が話題となっている菅総理の新著「政治家の覚悟」の元本の出版、この団体の経費で賄われていた。(文、写真/立岩陽一郎)

前回に続き、菅総理の資金管理団体「横浜政経懇話会」について見るが、今度は支出を見てみたい。その2011年の報告書に以下のような記述が有る。それは政治活動費の内訳として書かれている。

横浜政経懇話会の政治資金収支報告書

「書籍制作費 2,199,750」。

支払いの有ったのはその年の9月22日。支払先は文藝春秋となっている。

その時期から見て、今回あらためて文春新書として出版された菅総理の著書「政治家の覚悟」の制作関連の費用と見られる。同書は「文藝春秋企画出版」が出しており、文藝春秋の社員によると、この部署は自費出版を扱うのだという。

菅総理の自著「政治家の覚悟」

報告書には、「出版記念パーティー」とも記載されており、制作費として支払ったのか、パーティーの費用として支払ったのかは明確ではない。

因みに、この本には有名なエピソードがある。本の内容について当時官房長官だった菅総理が官房長官会見で記者から質問を受けているのだ。

「政府がどう考え、いかに対応したかを検証し、教訓を得るために、政府があらゆる記録を克明に残すのは当然で、議事録は最も基本的な資料です。その作成を怠ったことは国民への背信行為であり…」。

朝日新聞の南彰記者が本の一節を読み上げて、「これを書いた政治家を知っていますか?」と問うている。しかし、当時の菅官房長官は誰が書いたのか知らなかった。原稿を見ていなかったということなのだろうか。

今回の新著の出版にあたって削除されたのが「政府があらゆる記録を克明に残すのは・・・」といったくだりで、それがニュースで取り上げられている。何れにせよ、著者にとって思い入れの有る内容では無かったということだろう。

実は翌年2012年の報告書にも関連した支出が有る。何れも文藝春秋に払われている。

「販売委託口座開設料 420,000」

「広告料 760,620」

つまり最初に出された菅総理の著書は、制作も販売委託も、その本の広告も全て資金管理団体からの支出で賄われていたということだ。その総額は338万円余り。自費出版であれば妥当な額とも言えるかもしれない。

しかしこれまで見てきた通り、「横浜政経懇話会」の収入は支持者から得たパーティー収入だ。そのパーティーの不可思議さには前回触れている。団体は政治活動のための資金管理団体であって、菅総理個人の財布ではない。この本の出版は政治活動だという主張だと思われるが、自著の制作費、宣伝の費用くらいは自らの財布から出すべとの指摘は出るだろう。また、政治活動だとするなら政策に関わる記述を削除している点との整合性が問われるかもしれない。

加えて、この経緯を見れば、新たに出た新書の印税は当然、「横浜政経懇話会」に入るのが筋だろう。どう処理するのかは注視したい。

このシリーズで扱っている政治資金収支報告書は、国会議員が自らの選挙区の都道府県か総務省の選挙管理委員会に届けられ、3年間にわたって閲覧が可能だ。そして毎年11月に前の年の報告書が公開される。公開されれば、古いものは公開の対象から外れる。そのため、今回取り上げた2011年と2012年の報告書は、公益財団法人「政治資金センター」のデータベースでしか確認できない。

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