アメリカ大統領選挙の開票をめぐり、ネバダ州など複数の激戦州で投票率が100%を超えたと指摘する情報がツイッターで拡散した。不正選挙であったかのような印象を与える者だが、実際に投票率が100%を超えている州はない。現地メディアも検証済みだ。(田島輔)
アメリカ大統領選挙の投票率
ネバダ州 125%
ペンシルベニア州 109%
ミネソタ州 107%
ノースカロライナ州 106%
ウィスコンシン州 105%
ミシガン州 105%
アリゾナ州 101%
(2020年11月5日、匿名アカウントのTwitter投稿)
【誤り】 各州で事前に登録された有権者数と、確認できる投票数を比較すると、投票率が100%を超えている州はなく、拡散した数値はいずれも事実ではない。
この投稿は5000件以上リツイートされていた。他にも同内容の投稿が拡散されているものがみられる。
有権者登録制度とは?
まず、前提としてアメリカの選挙制度について確認しておこう(参考:CNN日本語版「米国の選挙で必要な「有権者登録」とは?」)。
アメリカには全国的な有権者名簿は存在しておらず、選挙で投票するためには、市民が自身の居住地において有権者登録を行い、有権者の資格を得なくてはならない。
有権者登録の制度は州によって異なるが、有権者登録サイト「vote.org」を確認すると、約3分の2の州が大統領選挙の日の前に登録をすることを求めており、締切日は10月最初の数週間に設定されている。
他方、今回のツイッター投稿では取り上げられた激戦州のうち、ネバダ州、ミネソタ州、ウィスコンシン州、ミシガン州は、選挙当日にも有権者登録が可能となっている。
実際の投票率は?
実際の投票率は、選挙日に最も近い時点での有権者登録数と投票数から推定できる(確定値は、開票率100%にならないとわからない)。
大統領選挙があった11月3日に最も近い時点での有権者登録数と、ツイッター投稿がされた11月5日現在で確認できる投票数(abcNewsのサイト参照)をまとめると、以下のとおりだ。
① ネバダ州
有権者登録者数 182万1864人(2020年11月5日時点)
投票者数 122万2331人
投票率 67.1%
② ペンシルべニア州
有権者登録者数 909万1371人(2020年11月2日時点)
投票者数 648万7887人
投票率 71.4%
③ ミネソタ州
有権者登録者数 358万8563人(2020年11月2日時点)
投票者数 326万1285人
投票率 90.8%
④ ノースカラロイナ州
有権者登録者数 736万1219人(2020年11月3日時点)
投票者数 545万9577人
投票率 74.1%
⑤ ウィスコンシン州
有権者登録者数 368万4726人(2020年11月1日時点)
投票者数 329万7420人
投票率 89.5%
⑥ ミシガン州
有権者登録者数 812万7804人(日時不明)
投票者数 551万5817人
投票率 67.8%
⑦ アリゾナ州
有権者登録者数 428万1152人(2020年11月)
投票者数 291万0677人
投票率 67.9%
11月5日以降も開票が進み、投票者数は増えているが、11月17日の最新情報でみても、投票率が100%を超えている州はなかった。
海外の投稿はファクトチェック済み
拡散したツイートには情報のソースが示されていないが、「Latinos for Trump」と称するトランプ氏を支持するFacebookページに11月5日ごろ投稿された画像の投票率と一致している。だが、この情報はアメリカの複数のファクトチェック団体により検証済みで、Facebookにより警告表示が出ている(Lead Stories、USA TODAY)。
結論
以上のとおり、各州の選挙管理委員会のサイトで確認できる有権者登録数と実際の投票者数を確認しても、投票率が100%を超えている州は存在せず、この情報は「誤り」だ。
(冒頭写真:選挙の結果に不服を唱えるトランプ支持者の集会、CNNのYouTubeより)