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[FactCheck]室井佑月氏が「社会的に問題になろうが、知ったこっちゃない」とデマを肯定? 発言の一部を切り取ったツイートが拡散 

[FactCheck]室井佑月氏が「社会的に問題になろうが、知ったこっちゃない」とデマを肯定? 発言の一部を切り取ったツイートが拡散 

作家の室井佑月氏が、「自分から発生したデマなどが、どれだけ社会的に問題になろうが、知ったこっちゃないのよ。そんときに自分が売れれば。」とデマのを肯定する発言をしたとのツイートが拡散した。しかし、室井氏の発言は一部が切り取られており、当該ツイートは本来の意図を誤解させるものだった。(藤 華子)

チェック対象
本音でちゃったーーーーーーwwwwwwwwwwwwwww
(「自分から発生したデマなどが、どれだけ社会的に問題になろうが、知ったこっちゃないのよ。そんときに自分が売れれば。」との室井氏の投稿に対して)(2021年4月2日、匿名アカウントのツイッター投稿)
結論
【ミスリード】 拡散したツイートは、室井氏の発言の一部を切り取ってコメントしたもの。全ての発言を読むと、室井氏自身の意見ではなく、デマを発信する第三者の心情を推測して、批判した発言であることが分かる。

問題のツイート引用している室井氏の発言は、確かに室井氏自身によってツイートされたもので、2021年4月20日現在、233件のリツイート・298件のいいねがされている。

そして、室井氏のツイートを引用リツイートしたものが、「本音でちゃったーーーーーーwwwwwwwwwwwwwww」との文章付きで投稿された問題のツイートだ。この投稿は2021年4月20日現在、約1000件のリツイート、約1900件のいいねを獲得している。

室井氏の当該ツイートだけを見ると、確かに、デマを広げてでも自分の名前が売れればいいと、デマの発信を肯定しているような印象を受ける。しかし、この発言は本当にそのような趣旨でなされたものなのだろうか。

問題のツイートの背景は?

室井氏が「自分から発生したデマなどが…」とのツイートを投稿した背景は以下のとおりだ。

2020年9月28日、室井氏の夫であり、元新潟県知事で弁護士の米山隆一氏が、米山氏や室井氏に批判的なツイートを行っていた匿名アカウントについて、代理人弁護士として発信者情報開示請求を行った

これについて、神戸市会議員の岡田裕二議員が、一般市民に対して発信者情報開示請求を行うことは、「スラップ訴訟」にあたる等として批判する旨のツイートを投稿した(当該ツイート自体は削除済み)。

スラップ訴訟とは勝訴の見込みがないのに、相手への威圧などを目的として起こす訴訟のことだ。米山氏は、岡田議員の当該ツイートは名誉毀損に該当するとして損害賠償訴訟を起こしたが、岡田議員が米山氏に謝罪することによって、和解が成立している

また、岡田議員は、寄稿した「月刊Hanada」の記事内で室井氏のツイートが発端で「日の丸マスク」が製造中止になった件に言及したが、この中に事実ではない点があったとして、この点についても謝罪している(「日の丸マスク」の件の経緯はこちらに詳しい、参照12)。

デマを肯定する趣旨で投稿?

室井氏による冒頭のツイートは、米山氏と岡田議員が和解したことについて言及した一連のツイートの一部だ。室井氏の一連のツイートを全て読むと、問題の発言は自分がデマを発信することを肯定する趣旨ではなく、デマを発信している第三者への批判だと分かる。

ツイート中で、室井氏は岡田議員による謝罪を拡散したことに対する批判に反論している。上述のとおり、岡田議員は室井氏について事実に反する記事を寄稿していたことから、室井氏は自身に関するデマの拡散を防ぐために、岡田議員の謝罪ツイートを拡散させたということだろう。

そして、岡田議員をはじめとするデマを発信する人たちへの批判として、「自分から発生したデマなどが、どれだけ社会的に問題になろうが、知ったこっちゃないのよ。そんときに自分が売れれば。」と主張しているのであって、デマの発信を肯定する趣旨ではないことは明確だ。

したがって、チェック対象のツイートは、室井氏の一連のツイートの一部を切り取り、あたかも室井氏が「デマが社会的に問題になろうが、知ったこっちゃない」との意見をもっているかのような印象を与えている。

結論

「自分から発生したデマなどが、どれだけ社会的に問題になろうが、知ったこっちゃないのよ。そんときに自分が売れれば。」と室井氏が述べたことは事実である。しかし、この発言は、デマを発信している第三者に向けられたものであって、室井氏自身がこのような意見をもっているということではない。

問題のツイートは、発言の一部を切り取ることで、あたかも室井氏がデマの発信を肯定しているかのような誤解を与えるものであり、「ミスリード」と判定する。

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