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【Fact Check】コーランによると「異教徒は騙して殺す対象である」は誤り

【Fact Check】コーランによると「異教徒は騙して殺す対象である」は誤り

イスラム教の聖典コーランによると「異教徒は騙して殺す対象で、大多数の日本人に対しては殺人宗教」だとするツイートが投稿され、拡散されている。しかし、イスラム教の複数の研究者によると、コーラン(=クルアーン)にはこのような記述はどこにもなく、投稿の内容は誤りだ。

対象言説

「イスラムの建前、コーランから言えば、異教徒は騙して殺す対象であって、大多数の日本人に対しては殺人宗教です」(Twitter、投稿者:buvery、5月24日) 

結論

【誤り】コーラン(クルアーン)には、異教徒を騙して殺す対象だという記述はない。

InFactはレーティングをエンマ大王で示している。
問題のツイートは「誤り」であり、これは3エンマ大王となる。

エンマ大王のレーティングは以下の通り。

  • 4エンマ大王 「虚偽」
  • 3エンマ大王 「誤り」
  • 2エンマ大王 「ミスリード」「不正確」「根拠不明」
  • 1エンマ大王 「ほぼ正確」

InFactはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、InFactのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。

ファクトチェックの詳細

日本イスラム協会監修『新イスラム事典』平凡社(2002)によると、コーランとは、正しくは「クルアーン」と呼ばれる、アラビア語で書かれたイスラム根本聖典だ。 ムハンマドが最初に啓示を受けた610年から632年の死にいたるまでの22年間、預言者として、また共同体の政治的指導者として活躍する折々に神から下されたとされる啓示を人々が記憶し、後に第3代カリフ、ウスマーンの時に集録されたものであるとされている。

日本における最初のムスリムの団体である宗教法人日本ムスリム協会に確認したところ、「コーランに異教徒を騙して殺すという記述はない」との回答だった。

回答は以下の通り。

 質問 コーランには異教徒は騙して殺す対象という記載があるのか?

 回答 ありません。コーランでなく、クルアーンとの表記が学会でも一般的になっています。

また、ジョン・L・エスポジト(山内昌之監訳、井上廣美訳)『イスラーム世界の基礎知識 今知りたい94章』原書房(2009年)には、次のように記載されている。 
「イスラム教は異教徒に対し長い寛容の歴史を保持しており、クルアーンには人類の多様性を強調する言葉が数多くある」(p.122) 

『クルアーン 日本語読解』(東京ジャーミイ出版会2022年)によるとクルアーンには下記の記述が含まれている。

・宗教に無理強いがあってはならない。(2章256節)

・イスラームは思慮分別と、イスラームの啓示として周知されている原則に反することのない限り、他の宗教のあらゆる教えを受容する。(3章40節)

・誰であれ人を殺したか、地上に退廃を広めたというのでもないのに、人ひとりの命を奪った者は、すべての人々をことごとく殺したのと同様である。また、人ひとりを生かした者は、すべての人々をことごとく生かしたのと同様である。(5章32節)

このように、コーラン=クルアーンには異教徒をだまして殺す対象といった記載はない。 

(木村海里、前田真幸)

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