5月下旬、大阪府の吉村洋文知事が万博へ学校を招待する事業について、「75%に相当する950校もの学校から参加希望」が有ったとXに投稿した。しかしアンケートの対象校は1900あり、この時点での参加希望の表明は正確には50%でしかなかった。
対象言説
「児童生徒の万博招待事業ですが、現時点で1280校から回答あり、75%に相当する950校もの学校から参加希望がありました。残り25%も未定・検討中です。家庭の事情等で万博に行けない子供達も含めて、多くの子供達に世界の最新技術、多様な価値観、文化に触れて欲しいと思います。」のうち、前半の「児童生徒の万博招待事業ですが、現時点で1280校から回答あり、75%に相当する950校もの学校から参加希望がありました。」
結論 【ミスリード】
調査対象は1900校であり、この時点の参加希望は50%が正しい。
InFactはレーティングをエンマ大王で示している。
問題のツイートは3エンマ大王となる。
エンマ大王のレーティングは以下の通り。
- 4エンマ大王 「虚偽」
- 3エンマ大王 「誤り」
- 2エンマ大王 「ミスリード」「不正確」「根拠不明」
- 1エンマ大王 「ほぼ正確」
InFactはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、InFactのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。
ファクトチェックの詳細
まず、アンケート結果の詳細について確認するために、大阪府の万博推進局参加促進部に①公式にアンケート結果を公表しているページやサイトはあるのか?②吉村知事のポスト以外に、私たちがアンケート結果を確認できる場所はあるのか?を確認することにした。
5月30日に電話で問い合わせたところ、「担当部署がおそらく教育庁にあるので、教育庁から回答を得て、折り返し連絡をする」とのことだった。しかし連絡が無かったので6月4日に再び問い合わせを行ったところ、「大阪府教育庁の方に問い合わせをし直してほしい」と言われ、同日、大阪府教育庁の担当者に連絡した。
大阪府教育庁の担当者は問い合わせに対して次のように答えた。
「アンケート結果をまとめた(サイトの)ページなどは無い。アンケート結果については吉村知事のX上のポストによる簡易的な報告もしくは、各報道機関に向けて会見したアンケート結果報告の様子を報道しているニュースで確認していただくことができる/会見で使用していたフリップも会見用であり一般公開はしていない」
(6月3日の会見の様子は日本維新の会のYouTubeで確認することができる。)
ただ、この時点では、アンケートの途中経過でしかなかった。最終結果は6月3日にまとめられた。それによると、「調査対象1900校のうち、回答があったのが1740校。そのうち「希望する」が1390校、「未定・検討中」が350校で、未回答が160校」であったことが分かった。
1900校の調査対象のうち、参加希望は1390校ということで、参加希望校は調査対象の73%となり、吉村知事の発言の75%とは異なるものの、ほぼ同じ数値となる。しかし、吉村知事が発信したのは5月27日であり、この時点での参加希望校は950校でしかない。そうなると、参加希望校は調査対象の1900校の50%、つまり半数でしかない。
つまり、対象の吉村知事の発信について言えば、「1900校のうち50%の950校の学校から参加希望がありました」が正しく、この段階での参加希望を多く見せる結果となっている。
勿論、結果的に7割を超える学校が参加希望を表明したわけだが、途中経過を多く見せることが5/27時点で「未回答」であった学校の判断に影響した可能性も否定できない。
このアンケートをめぐっては、「参加希望」か「未定・検討中」の二者択一だったことを批判する声も出ている。加えて、InFactでアンケート結果の詳細を調べようとしても該当する資料が公開されておらず、大阪府の担当者から報道内容と知事のXでの発信しかない旨の説明があった。そうしたアンケート結果を確認できる方法が限られている中で、1900校が対象だという全体像を示していなかったことは情報の開示の在り方として適切とは言い難い。以上のファクトチェックから、この言説をミスリードであると判定する。
このファクトチェック結果について担当の大阪府教育庁教育総務企画課にコメントを求めたところ、「教育庁としてはコメント等は特にございません。」とのことだった。
(InFact編集部)
(編集長追記)
この記事の執筆者をInFact編集部としているのには理由がある。大阪府の吉村知事や松井前大阪市長の発言をファクトチェックすると、匿名の非難や誹謗中傷が執筆者に寄せられるケースが多々見られる。InFact編集部としているのは、ファクトチェッカーを守るための選択だ。記事の最終責任者は編集長であり、非難や誹謗中傷をしたければ編集長が受ける。