日本維新の会の吉村洋文共同代表(当時)が、「公益通報を禁止する条例の制定」を提案したとの情報がネットで拡散した。しかし、実際にはそうした発言は無く、拡散している情報は「誤り」だ。
対象言説
「公益通報を禁止する条例の制定を提案にいれてんのヤバすぎるだろ」
結論 【誤り】
吉村共同代表(当時)の提案は、兵庫維新側が選択肢の一つとして「公益通報に関する条例の制定」に取り組むことを議会に求めているが、ネット上で拡散されている「公益通報を禁止する条例の制定」の提案という情報は事実と異なるものであり、「誤り」と判定する。
InFactはレーティングをエンマ大王で示している。
問題のツイートは3エンマ大王となる。
エンマ大王のレーティングは以下の通り。
- 4エンマ大王 「虚偽」
- 3エンマ大王 「誤り」
- 2エンマ大王 「ミスリード」「不正確」「根拠不明」
- 1エンマ大王 「ほぼ正確」
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ファクトチェックの詳細
吉村洋文共同代表(当時)の提案というのは、2024年11月24日に開かれた「兵庫維新の全体会議」でのものだ。その際に、「公益通報を禁止する条例の制定」を提案したとの情報がネットで拡散した。最も拡散されているツイートは2024年11月28日時点で8.9Kいいねを獲得している
吉村氏の発言を動画で確認できなかったため、対象言説のポストが引用している毎日新聞の記事を確認した。記事タイトルは「維新が兵庫県知事選を総括 吉村共同代表、県議会自主解散など要求」で、次のように掲載されている。
「会合終了後、報道陣の取材に応じた吉村氏は、県議会の自主解散▽公益通報への適正手続きやパワハラの防止、職員の政治活動の禁止などを定める条例の制定▽維新県議団で別の対応を検討――の三つの選択肢を兵庫維新側に提示したと明らかにした。」
記事には、「公益通報を禁止する条例の制定を提案」したとの内容は書かれておらず、逆に「公益通報への適正手続きを定める条例の制定」となっている。
朝日新聞の記事も確認した。それは「兵庫維新、議会の「自主解散」も選択肢に対応検討へ 斎藤知事再任で」で、次のように書かれている。
「知事や議員によるパワハラ防止や公益通報制度の確立のほか、職員の政治活動制限、政治的中立性を求める計四つの条例制定に取り組むことも議会側の対応策のひとつとして提示したという。」
つまり、記事からは、吉村共同代表は「公益通報制度の確立の禁止」を求めたとは言えない。
また、兵庫維新の会代表だった片山大介氏(当会合にて兵庫維新の会代表辞任を発表)が同24日に投稿したXのポストには次の様に書いてある。
「吉村共同代表からは、斎藤知事が再任されたことについて、「不信任を出した県議会が何もなかったように終わらせるのは筋が通らない」と指摘されました。そのうえで、▽県議会の自主解散や、▽公益通報の条例制定をはじめとする県政混乱の再発防止策など、維新としての方向性を示すべきとの提案を受けました。」
勿論、吉村氏の「公益通報への適正手続き」「公益通報の条例制定をはじめとする県政混乱の再発防止」が何を意味するのかは明確ではなく、「適正手続き」が制度の形骸化を生むという懸念を指摘することは可能かもしれない。一方で、公益通報は公益通報者保護法という法律によって定められている。現在、消費者庁でこの法律の罰則の強化などが議論されていることが報じられているが、条例は日本国憲法「第九十四条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。」の通り、法律の範囲内でのみ制定ができるものである。「公益通報を禁止する条例」のような法律の範囲を逸脱した条例を都道府県が制定することはできない。
(石盛なごみ)