2025年1月20日(現地時間)に新たにアメリカ大統領に就任するドナルド・トランプ氏は78歳。選挙戦では候補者の高齢が指摘され、民主党の候補者がジョー・バイデン大統領からカマラ・ハリス副大統領に交代したことは記憶に新しい。81歳のバイデン大統領、78歳のトランプ大統領ともに高齢であることは間違いない。高齢化が日本を含む先進国でキーワードとなる中、それはアメリカの大統領にも言えるのかファクトチェックした。
対象言説 アメリカ大統領は高齢化が進んでいるのか?
結論 【誤り】
InFactはレーティングをエンマ大王で示している。
問題のツイートはこれは3エンマ大王となる。
エンマ大王のレーティングは以下の通り。
- 4エンマ大王 「虚偽」
- 3エンマ大王 「誤り」
- 2エンマ大王 「ミスリード」「不正確」「根拠不明」
- 1エンマ大王 「ほぼ正確」
InFactはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、InFactのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。
ファクトチェックの詳細
アメリカにおいて大統領になるための要件は、合衆国憲法第2章のうち第1条の第5項に書かれている。
「出生により合衆国市民である者でなければ大統領の職に就くことはできない。年齢は満35歳に満たない者、および合衆国内に住所を得て14年を経過していない者は、大統領の職に就くことはできない(原文)」。
大統領就任時の年齢を比べた場合、78歳だったバイデン大統領以前の最高齢は、2017年のトランプ氏の70歳。それまでの最高齢は1981年のレーガン氏で69歳だっただけに、大統領の高齢化が指摘されてきた。
実際にどうなのか?以下、初代大統領のジョージ・ワシントンから2025年1月20日に第47代大統領に就任するドナルド・トランプ氏までの就任時の年齢を確認してみる。
1月20日に2度目の就任となるトランプ氏を含めると大統領の就任時の平均年齢は56歳となる。それを考えると確かに78歳で就任したバイデン大統領と同じく78歳で大統領に就任するトランプ氏はともに最高齢での大統領への就任であり、大統領の高齢化を物語っていると言える。
下の表は初代から47代の大統領が就任した年と就任したときの年齢をまとめたものだ。
この年齢の推移をグラフにすると次の様になる。
後半のオバマ氏からトランプ氏、バイデン氏、そしてトランプ氏というところで急激に上昇しているが、基本的にグラフが示すのは上がったり下がったりをランダムに繰り返す状況であって、右肩上がりといった傾向は見られない。
もう少し長期の変化で見るとどうなるか?45人の大統領(トランプ氏は2017年と2025年の二度カウント)の就任したときの平均年齢を古い順から15人ずつ3つのグループに分けて計算した。
その結果は以下だ。
▲初代のワシントンから15代のブキャナンまでが57.1歳。
▲16代のリンカーンから30代のクーリッジまでが51.6歳。
▲31代のフーバーから47代になるトランプ氏までが58.8歳。
いわゆる「建国の父」たちの時代から南北戦争直前までは平均年齢がやや高く、その後、アメリカが発展していく19世紀後半から20世紀初めまでは平均年齢が若くなっている。そしてアメリカが2つの世界大戦、そして戦後に超大国になり現在にいたる時代に再びやや高くなるが、初代から15代までと31代からトランプ次期大統領までで極端に大きく数字が変わっているわけではない。つまり、大統領が高齢化しているという一貫した傾向があるわけではない。
以上がファクトチェックの結果だ。以下は参考情報として追記しておく。
アメリカの平均寿命は、CDC・アメリカ疾病対策予防センターによると最新のデータで77.5歳だ。この平均寿命が50歳を超えたのは20世紀初頭であり、1920年代は60歳前後を行ったり来たりする。そして70歳を超えるのは1960年代に入ってからだ。最近は横ばい傾向だが、この100年間に平均寿命はおよそ20年伸びている。
(清水竜太郎)