立憲民主党の枝野幸男代表が「法人税についてはですね、安倍政権で23(%)まで下がったものを28(%)に戻すということを言っています。バイデン政権も28(%)に戻そうと言っていますね。」と発言したが、これは事実に基づいているのか?ファクトチェックした(友長光明、村田風佳、田島輔)。
法人税についてはですね、安倍政権で23(%)まで下がったものを28(%)に戻すということを言っています。バイデン政権も28(%)に戻そうと言っていますね。
(枝野幸男立憲民主党代表、日本記者クラブ党首討論(2021年10月18日)での発言)
【ミスリード】 安倍政権下で法人税は23.2%に引き下げられたことは事実だが、民主党政権下の方が大きく法人税を引き下げていた。
枝野代表の発言は2021年10月18日の日本記者クラブ主催の党首討論で行われたものだ。
安倍政権下で法人税が23.2%に引き下げられたが…
財務省のホームページで確認したところ、日本での法人税率の推移は以下のとおりだった(参照)。
まず、法人税について、1999年から2011年のまでの基本税率は30%であった。
2012年に野田内閣の下で法人税は25.5%に引き下げられ、その後、安倍内閣(2015年)において23.9%へ引き下げられた。
その後も段階的に引き下げられ、2016年に23.4%、2018年に現在の23.2%になっている。
確かに、現在の23.2%まで法人税を引き下げたのは安倍政権下であるものの、法人税率を30%から25.5%に大きく引き下げたのは、民主党政権である野田内閣においてだ。
「法人税を28%に戻す」とは、野田内閣以前の水準に近づけることを意味していることから、「法人税は安倍政権で23%まで下がった」との枝野代表の発言は、安倍政権だけが法人税を引き下げたとの印象を与えるものであって「ミスリード」だ。
バイデン政権は法人税の引き上げを提案
では、アメリカの法人税率についてはどうだろうか。
2017年12月にトランプ政権下で成立した税制改革法案によって、2018年1月1日から連邦法人税は35%から21%に引き下げられていた(参照)。
そして、今年就任したバイデン大統領は、法人税率を21%から28%に引き上げることを提案していた(参照)。
実際、今年5月の米国財務省の説明では、2022年度の歳出に関する財源として21%から28%への法人税率引き上げが提案されている(参照)。
ただし、現時点で米国民主党は法人税率26.5%への引き上げを提案しており、28%への法人税率の引き上げは困難なようだ(参照)。
もっとも、「バイデン政権が28%まで法人税を戻そう」と提案していたことは事実であるため、枝野代表のこの点の発言は「正確」だろう。
結論
検証したところ、法人税について「バイデン政権も28(%)に戻そうと言っていますね。」との発言は「正確」と言えそうだ。
しかし、発言の根幹である「法人税についてはですね、安倍政権で23(%)まで下がった」との部分は、民主党政権下で大きく法人税が引き下げられたことに言及されておらず、安倍政権下で特に法人税が引き下げれたとの印象を与えるものであって「ミスリード」だ。
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(冒頭画像:日本記者クラブ主催の党首討論会(10月18日)で発言する枝野幸男立憲民主党代表)