
フランスで、生活保護受給者に週50時間の労働が義務化されたとの情報がネットに拡散した。しかし、実際に義務化されたのは週15~20時間の活動であり労働の義務化ではない。
対象言説
「【悲報】フランス、今日から生活保護受給者に週50時間の労働を義務化。働かない奴は打ち切り」
結論 【誤り】
問題のツイートは3エンマ大王となる。

エンマ大王のレーティングは以下の通り。
- 4エンマ大王 「虚偽」
- 3エンマ大王 「誤り」
- 2エンマ大王 「ミスリード」「不正確」「根拠不明」
- 1エンマ大王 「ほぼ正確」
InFactはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、InFactのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。
ファクトチェックの詳細
対象言説は日本の生活保護にあたるRSA制度について言及したものである。25年1月4日で29万を超える表示を記録している。
フランスでは2023年の春からRSA制度の改革が始まった。この改革によって今まで40%のRSA受給者が、France Travail(公共職業安定所)への登録と週15~20時間の活動が求められてきた。
まず、情報源として引用されている記事の内容を確認したい。
Franceinfo:というフランス公共サービス情報サイトに掲載されており、記事タイトルは「Ce qu’il faut savoir sur la réforme du RSA, généralisée à partir du 1er janvier 2025(2025年1月1日から一般的に導入されるRSA改革について知っておくべきこと)」である。
この記事によると、試行期間を経て2025年1月1日からはRSA受給者の全員が強制的かつ自動的にFrance Travailに名前が登録されるようになる。RSA受給者は週15~20時間の活動が義務付けられることとなり、活動時間に満たない場合はRSA支給の一時停止という新たな制裁が2025年前半にも執行される予定である。
注意すべきは、週15~20時間の「活動」は「労働」ではないことだ。このファクトチェックで対象言説を「誤り」としている根拠だ。フランス政府の公式ウェブサイトによると、その活動には次のものが含まれる。
・d’une immersion en entreprise pour affiner son projet professionnel
(キャリアプランをたてるための企業研修)
・de l’obtention du permis de conduire
(運転免許の取得)
・de la réalisation de démarches d’accès aux droits
(権利にアクセスするための手続きの実施)
・de la participation à des activités dans le secteur associatif.
(非営利団体の活動への参加)
上記の活動は雇用・社会復帰を目的としたものとなっているが、労働を義務としているわけではない。
情報発信者が「12歳以上は高齢者や障害者でも免除されないとのこと」と述べているが、それも誤りだ。
Franceinfo:の同記事によると、障害や健康上の問題を抱えている人や、親権を持たない12歳未満の子供を持つひとり親は義務の対象ではなく、個人生活や家庭生活で困難に直面している人も調整が可能だ。
「ツイッター速報」にはどのような根拠でこうした情報を発信させたのか問い合わせを行っている。回答が届き次第、記事に反映させることにしている。
(石盛なごみ)
(編集長追記)
ツイッター速報の流す情報についてはInFactはこれまでも事実と異なる点を指摘し、その旨、ツイッター速報に対して伝えている。しかしこれまで一度も回答を得たことはない。是非、回答を求めたいし、その内容は記事に反映させることを読者にお約束させて頂く。