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<現地報告・バングラテロ事件>凶行に走った若者たちの素顔を追う(5・最終回) 両親が語る実行犯カイルルとは 宮崎紀秀

日本人7人を含め20人が殺害された7月のダッカテロ事件。異教徒と外国人に対する敵意はなぜ芽生えたのか? 実行犯の一人・カイルルの実家で会った農民の両親が語ったのは…。国際ジャーナリスト、宮崎紀秀の現地報告の最終回。

◆何も知らなかった父親

隣接して長屋のように組んだ隣の部屋で横になっていた実行犯カイルルの父親アブル(48歳)は、ゆっくりとした動作で起き上がった。日焼けした褐色の顔にくぼんでギョロリとした目、蓄えた長い口髭はほとんどが銀色だった。

汚れたTシャツから伸びた腕は血管が浮き出て黒光りしており、生活費を稼ぐために強いられる厳しい肉体労働を容易に想像させた。収穫期の農作業や建設作業を日雇いで手伝う労働者である。かつては息子も共に働いた。アブルは、息子が誰かにそそのかされたのだと訴える。

「息子のために一生懸命働いた。教育に十分な金を与えてやれなかったので、息子は、彼らのために働いた」
関連写真:バングラテロ事件 唯一貧農出身の実行犯カイルルの実家を訪ねる

父にも息子が日本人や外国人について特に話をしたという記憶はなかった。

————息子が他の日本人が巻きこまれた事件(星邦夫さん殺害事件)に関わっていたが。
「今、(質問されて)初めて知りました」

————息子がそのような事件に関わったことについてどう思う。
「わかりません」

父親の部屋はカイルルの寝室でもあった。小さな棚にはカイルルが使っていた「バングラデシュの文学」「イスラムの歴史」という教科書やノートが横積みのまま残されていた。ノートを開いてみると、作文の学習だったのだろうか半ページ分くらいの手書きの文章があり、その中に「将来は警察官になりたい」という一文があった。

ノートにはいくつかの異なる筆跡が残されていたので、それがカイルル自身の文章だったかどうかは分からない。文字の読めない両親にそれが息子の文字かどうかの判断はできなかった。

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