インファクト

調査報道とファクトチェックで新しいジャーナリズムを創造します

米国ジャーナリズムの新たな潮流~非営利化する調査報道⑥立岩陽一郎

●調査報道ワークショップの誕生

提案はアメリカン大学の理事会で了承され、2008年、Investigative Reporting Workshop(以下、IRW)が誕生する。日本語では、「調査報道ワークショップ」と訳することができるだろう。ルイスはコミュニケーション大学院の教授としてアメリカン大学に招かれ、同時にIRWの代表に就任した。

ルイスは、最初に創ったCPIの時と同様に、このIRWの名称にもこだわりを持ったと、次の様に話している。

「大学のセンターというと、ただの研究機関というイメージが強くなる。ラリー(カークマン)と私が目指したものは、ジャーナリズムの研究もやるけれども、調査報道を維持する新たな取り組みを始めるということだ。Workshopという言葉には『作業』をする意味がある。汗をかく。我々はセンターで資料を読むだけじゃない。ジャーナリズムを実践する。それを表わしたかった」。
アメリカン大学の理事会に提出された起案書から、その点を更に詳しく紹介したい。まず「その意義」として以下の様に書かれている。

「米国に於ける調査報道はこれまで、新聞と放送という主要メディアと呼ばれる報道各社に雇われたジャーナリストによって実践されてきた。多くの場合、それらは、1つのトピックを数ヶ月から数年にわたって追い続ける高い能力を持ったベテラン記者のチームによって行われてきた。不幸にして、そして愚かとしてか言いようがないのだが、近年の経済状況が報道各社に、調査報道にかける費用を削るか無くす方向に向かわせている。

Return Top