インファクト

調査報道とファクトチェックで新しいジャーナリズムを創造します

米国ジャーナリズムの新たな潮流~非営利化する調査報道⑥立岩陽一郎

調査報道が、我々の生活に大きな影響を与える強大な公的機関や巨大企業の活動を監視する役割を担うことで社会に寄与してきたことは疑いを挟まない。つまり、この重要な役割を担うための能力が全体として減少しようとも、調査報道の必要性が消えるものではない。

問題は、どのような形で強力かつ公共の利益に資する調査報道を残し、更に育てていくかだ。これは米国だけの問題ではない。特に近年民主主義が普及しつつある中米や東欧など、世界の多くの地域で求められている。

解決策の1つとして、調査報道ジャーナリズムを「非営利」や「第三セクター」の分野に移すということがある。実際、アメリカン大学客員特別ジャーナリスト(筆者記:当時)のチャールズ・ルイスによって設立された非営利ジャーナリズムのCenter For Public Integrityは、この選択が有効であることを示す素晴らしい実績を示している。このスタイルの非営利ジャーナリズムはチャールズ・ルイスの指導を得て全米に広まり始めている。例えば、UCバークレイでは、学生が調査報道の重要な担い手になるプログラムが作られている」。

また、「IRWの目指すものと機能」として次の様な点が列挙されている。

「IRWは学生に対して、刺激的で新しい学びの機会を提供する。また、教員に対しては教育と研究の場を提供する。我々はこれを世界中の優秀な調査報道ジャーナリストを集める磁石として活用したい。IRWは、アメリカン大学コミュニケーション大学院をジャーナリズムの最先端の場として評価を高めることになるだろう。そして、特に大学院において、優秀な学生を集めるのに役立つだろう。IRWのモデルは、セサミストリートを制作しその後の教育テレビの保育器かつ革新的な存在となったチルドレンズテレビジョンワークショップにある。私たちはこれまで調査報道を担ってきた主要な報道機関にとってかわろうとするものではない。それよりも、調査報道を全米、全世界に届けるため、それらの報道機関と連携を模索したい」

この言葉通り、IRWは日本から朝日新聞やNHKの記者を受け入れて様々な活動を行うことになる。(続く)

(この原稿は、南山大学アジア・太平洋研究センター報第8号(2013年6月)に掲載された論考を著者の承諾を得て転載したものです)
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<<執筆者プロフィール>>

立岩陽一郎 
NHK国際放送局記者
社会部などで調査報道に従事。2010年~2011年、米ワシントンDCにあるアメリカン大学に滞在し米国の調査報道について調査。

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