話は3か月前の今年1月にさかのぼる。その日、張さんが家でゲームをしていたところ、10年寄り添った31歳の妻から突然、別れ話を切り出されたという。妻とは喧嘩もしたことはなく、あまりの唐突さに張さんは面食らった。妻は、張さんが出稼ぎで家にいない生活に慣れてしまったので子供を連れて一人で暮らしたい、などと離別の理由を述べたが、張さんはその言葉を俄かには信じることが出来なかった。
突然の妻の心変わりに、何か思い当たる節はないか考えた張さんは、ふと、去年生まれた二人目の子供があまり自分に似ていないことに思い当たった。<もしかすると他人の子供なのではないか> そう疑いを抱いた張さんは子供の血液型を検査した。張さんと妻の血液型は共にO型。子供は、二人の間からは生まれるはずのないA型だった。その子は自分の子供ではなかった。浮気だった。
張さんが、妻の携帯電話の通話記録を取り寄せると、頻繁に電話をしていた人物が浮かび上がった。それは地元の順河鎮で共産党のトップを務める50歳の鄭尚金書記だった。鎮というのは、日本で言えば村や町に当たる行政区画の一つだ。張さんが追及すると、妻はその二人目の子供を連れて家を出て行ってしまった。
「自分の子が突然、他人の子になってしまったことは、今でも受け入れることができない。子供に死なれたような気持ちだった。妻を奪われた挙げ句、子供まで奪われてしまった」