前回も指摘した通り、米国では1967年に制定された反縁故法によって公職に就いた者が親族をその監督下にある公職に就けることを禁じている。これはケネディ大統領が実弟のロバート・ケネディーを司法長官につけたことが厳しく批判されて制定された法律だ。
ただ、問題はそれだけではない。これに加えて問題視され始めているのが「利益相反」だ。
クシュナー氏がかねてから指摘されているのは、彼のビジネスと各国との関係だ。クシュナー氏は主にニューヨークで不動産業を営んでいるが、その資金を中国など外国の投資会社に頼っていることが再三指摘されている。クシュナー氏の弁護士はホワイトハウス入りに際して経営している会社を辞するので問題無いとしているが、仮にクシュナー氏が外交政策の上級スタッフとなった場合、それがどこまで説得力を持つのか疑問は残る。
また、ワシントン・ポスト紙は、投資家のカール・アイカーン 氏のホワイトハウス入りが確実になったと報じた。アイカーン氏は連邦政府の規制のあり方を見直す担当となるという。見直すとは、素直に言えば、規制緩和ということである。
アイカーン氏は主にエネルギー関係の事業に投資をしており、その厳しい連邦政府の規制を批判してきたことで知られる。アイカーン氏が規制見直しの責任者になるということは、彼がまっとうに仕事をすることがそのまま彼の事業を利することになるとの指摘も出ている。
参考記事: トランプの米国とどう向き合うか? (2) トランプ勝利を予言した米紙の記事
ホワイトハウスのスタッフは閣僚とは異なり、議会の承認を必要としない。しかし、利益相反に問われた場合、そう簡単には片付かない。任命の後も議会で追及される恐れは有る。今後、この「利益相反」という言葉が米国のメディアを賑わすことになるだろう。