「NCAFPは民間団体だが、トランプ政権の意を受けて動いたのは間違いないだろう。このタイミングでの取り消しを見ると、外交のプロである国務省が筋書きを描いたとは思えない。トランプ政権が強硬に推し進めたものの、最終的に判断がひっくり返ったと見るのが普通じゃないか」
2017年の8月16日には、トランプ政権と金正恩政権の双方が相手を必要としているという記事を書いた。抜粋すると以下のようになる。
・トランプ政権が強硬的に見えるどのような発言を繰り返しても、北朝鮮の体制変更を求めていないという点では一貫している。
・一方で、トランプ政権は極めて不安定な状態にある。中間選挙で与党共和党が負ける可能性がある。その結果、大統領弾劾の手続きが始まることも考えられる。
・そして、ここに金正恩氏の側にトランプ政権と交渉せざるを得ない理由がある。仮に、トランプ大統領が失脚した場合、大統領にはペンス副大統領が就任する。このペンス氏は伝統的な共和党の保守強硬派だ。ペンス政権となれば、北朝鮮に体制変更を迫り、金正恩政権を軍事的に包囲する政策を進める可能性が高い。
・北朝鮮が望む交渉相手はトランプ大統領であり、その為には、ギリギリのところでトランプ大統領に花を持たせる可能性は高い。
勿論、米朝首脳会談が開かれたからと言って、朝鮮半島の非核化が直ぐに実現するというほど甘くはない。ただ、トランプ政権に批判的なことで知られるCNNの3月9日の番組で、ゲストの1人が次の様に評価した。
「きのうまで我々は核戦争の恐怖を目の前にしていた。しかし、今、その恐怖は無くなった。それは認めなければいけない」。
これこそ、トランプ大統領の狙い通りの反応だと言って良いだろう。米国にとって先ず優先順位が高いのは、核そのものの存在ではなく、核が米国を向かないことだからだ。そしてそれはトランプ大統領にとって、「オバマが成し遂げられなかったことを成し遂げた」と誇れる成果となる。
勿論、そうして得られた「成果」が、実態を伴うものかどうかは誰にもわからない。