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【コロナの時代】韓国からの帰国(下)

【コロナの時代】韓国からの帰国(下)

海外からの入国が大幅に緩和されることになった。一番入国が厳しい時に韓国から帰国した学生が当時の状況をルポした。前回は韓国出国から関西空港到着まで。今回は、関空到着後。そこで待っていたのは長いステップだった。(浅田汐音)

ステップ4:必要書類の確認

PCR検査の為の検体採取を終え、案内通り通路を進むと、今度は壁に貼られたQRコードを読み取り、質問票を回答するエリアが登場する。

到着日時、便名、座席番号、氏名、国籍、隔離中の滞在場所などの質問項目があり、回答すると画面にQRコードが表示される。紙に記入するよりははるかに楽だと感じた。しかし横を見ると、スマートフォンの操作に慣れていない年配の人などは苦労していた。

確認事項のチェック

回答が終わると係員のいるブースに案内された。これはブース1だ。そこで機内で配布された3種類の書類と、スマートフォンに表示されたQRコードを係員に提示する。

このブース1では、係員がQRコードを読み取り、パソコンに何やら入力していた。ここでの手続きが終わると、すぐ後ろの別のブース2に案内される。どの書類のどの部分を確認しているのだろうか?少し気になった。

このブース2でも、機内で記入した書類を渡すと、係員が「施設入所前の確認事項」という新たな書類に滞在国、便名、検査番号を記入した。係員に「アレルギーや宗教上の都合で食べられないものはありますか?」と、宿泊施設滞在中に配慮が必要な事項がないかを聞かれた。私は「卵アレルギーがあります」と申告した。

ステップ6:2つのアプリをスマホに

その次に案内された場所は、普段は飛行機の搭乗を待つ空間だった。入国して出国のスペースで待つのは異様な気もしたが、番号札をもらいソファに座って待機すること5分、係員に番号を呼ばれ、ブース3に向かった。

ここでは、宿泊施設で隔離中に使う2種類のアプリ、「MySOS」と「COCOA」がスマートフォンに入っているかを確認された。私の場合は韓国で既にアプリケーションを2つともダウンロードしていた。していなかった場合はこのステップでダウンロードをすることになる。

MySOSは入国者健康確認センターが、入国者の居場所や健康状態を確認するためのアプリだ。COCOAはご存知、厚生労働省による新型コロナウイルス接触確認アプリだ。ただし、このCOCOAは隔離期間中、一度も使わない。当然だろう。隔離中に他人に接触することは無いのだから。これを入国時にダウンロードするように言われたのか、私にはその理由は分からなかった。

このブース3では、アプリがダウンロードされているかを確認され、アプリの登録は係員の指示に従って行った。登録が終わると次の様に言われた。

「MySOSを通して隔離中は1日1回健康状態の報告をお願いします。隔離中にはランダムで現在地報告の要請や、入国者管理センターからビデオ通話がアプリを通じてかかってくるので、対応をお願いします」

ステップ7:検査結果を待つ

アプリの確認まで終わったら、あとはPCRの検査結果が出るのを待つのみだ。便ごとに分けられた場所で、ひたすら検査結果が出るのを待つ。

ステップ8:検査結果が通知される

検査結果が出ると、係員が大声で番号を読み上げる。私より後ろの番号が先に呼ばれることもあった。私が呼ばれたのは13時45分。アプリの確認が終わったのが11時45分頃だったので、2時間、その場で時間を潰したことになる。検査結果は陰性だった。

入国審査と税関を通過する

検査結果が出たら、後は普段と同じように入国審査を受け、荷物を受け取り、税関で税関申告書の提出をする。税関の職員も、心なしか一人ひとりに丁寧に対応していた気がした。ここで終わり・・・というわけでは、当然ない。ゲートを出ると、別の係員がまた待機している。

ホテルでの隔離

係員に案内され、専用バスまで移動する。案内されたバスに書かれた行き先を見てどこのホテルで隔離をするのかを把握した。私の乗ったバスには「関西エアポートワシントンホテル」と書いてあった。

どのホテルになるかは完全にランダムで、バスに行き先が書いてあるため、このバスに乗る段階で隔離先のホテルが分かる。バスでホテルまで10分もかからなかった。14時半頃にホテルに到着した。ホテルに到着後は、職員専用の出入口を通じて、私たちが宿泊するフロアまで案内されたため、一般の宿泊客とは動線が重ならないように配慮されていた。

ホテルの5階に到着し、エレベーターを降りると、すぐ目の前に受付ブースが設置されていた。受付ブースで手指の消毒を終え、施設に宿泊するにあたっての確認事項書類を係員に渡すと、「アレルギーは卵のみですね?」と、再度チェックされた。その後、部屋に案内されたが、部屋の鍵は渡されなかった。入室する際に、遅めの昼のお弁当が提供された。

部屋に案内される際に、隔離中の食事に関する説明があった。部屋の前の廊下に椅子があり、朝・昼・晩、決められた時間に椅子の上にお弁当が置かれる。食べ終わった容器などは、この椅子の下に置いておくと係員が回収する方式だ。

韓国から入国した人は、入国した次の日を1日目と数えて6日目までホテルで隔離をすることが義務付けられている。私もそれに従い、部屋から一歩も出ない、完全隔離の生活が始まった。部屋には6日分のタオルや歯ブラシなどが用意されているため、備品や施設の面では苦労しなかった。しかし、私は食事が辛かった。毎食のお弁当は、基本的にご飯は温かいが、それ以外のおかずやパンなどは冷たい。また、メニューも毎日あまり代わり映えしないため、6日間がホテル隔離の限界だと感じた。韓国からカップラーメンを2つ持参していたのが幸いだった。

アプリによる管理

隔離中は入国後登録したアプリ「MySOS」で、隔離中は管理される。アプリで行うことは主に3つある。

一つ目は、1日1回アプリから発熱の有無や体調を報告する「健康状態報告」。二つ目は、「現在地報告」。1日数回、ランダムな時間にアプリを通じて現在地報告の要請がある。アプリ内の「現在地報告」というボタンを押すと位置情報が送信される。

三つ目は「ビデオ通話による居所確認」だ。1日に数回、ランダムな時間にビデオ通話がかかってくる。着信のある1、2分前にアプリで「これからビデオ通話を発信するので、マスクなどの顔を隠すものは外してください」という通知がある。通知が来て1、2分後にビデオ通話がかかってくる。

1日に2度の確認が行われた

応答すると、アプリの画面に顔の枠が表示され、スマートフォンのインカメラを利用して、30秒間その枠の中に顔が入るように維持し、映し続けなければならない。「ビデオ通話の映像から隔離場所で隔離をしているのかをAIまたは職員が判定します」と入国手続きの際に空港の係員が言っていた。応答する側はAIが判定しているのか、職員が判定しているのか分からない。ビデオ通話は隔離中毎日、午前と午後と1日2回かかってきた。

入国者健康確認センターとのやりとりは「MySOS」を通じてのみ行われた。

隔離中に2度行われたPCR検査

隔離中は3日目と最終日の6日目に空港で入国時に行った検査と同じ、唾液を利用したPCR検査が行われた。何れも、前の日にジップロックに入った検査キットが部屋の前に用意されていた。検査キットに同封されていた案内文には、検査当日の朝7時までに唾液を容器に採取し、容器の入ったジップロックをドアにマグネットクリップで貼り付けて提出するように書いてあった。

3日目に行われた検査の結果は、13時にホテルの部屋に設置されている内線電話で通知された。6日目は15時に同じく電話で通知された。2回とも陰性だった。最終日である6日目は、検査結果が通知されたら、隔離施設を退所となる

1月29日の午後16時、6泊したこのホテルを後にした。ホテルから、自宅に向かうまでに公共交通機関を利用してはいけないため、私は家族に車でホテルまで迎えに来てもらった。私と同じ日に隔離が終わった人たちの表情からは解放された嬉しさを感じることができた。帰宅する車の中で、ようやく日本に帰国したという実感が湧いてきた。

その後、政府は日本への入国の制限を大幅に緩和した。もう私のような形でのステップや隔離は無くなっているのかもしれない。私自身のコロナ禍での日本入国は、2020年9月以来、2度目となる。1度目の入国の際には誓約書の提出やアプリの設置、ホテルでの隔離などはなく、PCR検査を受け陰性だった場合、すぐ帰宅することが出来た。しかし、今回の日本入国の際の手続きは、1度目に入国した際の様子とはかなり違い、システム化され、はるかに厳格なものとなっていた。それは、時間がかかる上に面倒な手続きだったが、PCR検査やホテルの費用などは国が負担してくれているということを考えると有難く思えなくもない・・・とは言え、国が払うとはすなわち税金で賄われることもまた間違いない。

(「韓国からの帰国」は今回で終わりです。お読みいただき有難うございました)

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