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福島第一原発事故で新事実 事故直後の首都圏で高レベルの放射線量が計測されていた 

(山崎秀夫氏の解説)

アメリカ政府がこのような迅速な緊急時の対応をしていたことに驚かされる。一方で、日本はそのような測定をしていたのか、していなかったならばなぜしていなかったのかを検証する必要がある。

また、アメリカ政府が測定したデータの日本政府への情報の流れも検証しないといけない。日本政府がこの米国データの存在を知ったのはいつか?知っていて内容が理解できていれば汚染地域の住民の避難がもっと迅速にできていたはず。

【参考記事 フクシマ第一原発事故プロジェクト第2弾「米兵のトモダチは高線量で被ばくしていた」 】

今回の検証は、「放射性物質は県境を越えて飛来してくる」という事実と向き合うことを意味する。原発から30km圏内における避難計画が十分な距離と言えるのか?検証が必要だ。

(参考)IAEA傘下の機関である国際放射線防護委員会(ICRP)によれば、緊急時の一般人の放射線被曝の許容限度は年間1ミリシーベルト(0.114マイクロシーベルト/時)としている。

これは、人間の一生を100年として計算した場合に、この値を被ばくし続けると生涯に100ミリシーベルトを浴びる計算となることからきている。この100ミリシーベルトの被爆は、一般的にはがんの発生率を0.5%高めると考えられている。つまり、一生涯に100ミリシーベルトを被ばくした場合、200人が同様な数値を被ばくした場合に1人癌が発生することになる。

日本政府が許容範囲としている0.23マイクロシーベルト/時はこの1ミリシーベルトに、自然環境で被ばくする(体外被ばく)の0・96ミリシーベルトを加えた約2ミリシーベルトを一時間あたりで計測した値である。

一方、自然放射線による被ばくの世界平均は2.4ミリシーベルトとされているが、そのうち40%が体外被ばく(0.96ミリシーベルト)、60%(1.44ミリシーベルト)が体内被ばく。体内被ばくの大部分は食品と共に体内に入ってくるカリウム40(天然放射性核種)と地殻中のウランから供給されるラドン226(気体)の吸引による。体外被ばくは地殻中の放射性核種から放射されるガンマ線と太陽から来る放射線に由来する。要するに、自然放射線による体外被ばく線量と同じ線量を人為的な被ばくの限度にしようと考えたわけ。年間1ミリシーベルトは生涯被ばく線量としてほぼ100ミリシーベルトである(おおざっぱに100年生きると仮定している)。100ミリシーベルトの被ばくは固形癌の発がんリスクを0.5%上昇させると言われている。

注:アメリカ政府の元データでは、ガンマ線の値はレントゲン、ベータ線についてはキューリーを使っており、それぞれ国際標準であるシーベルトとベクレルに換算した。取材には当時のスタッフである鈴木祐太氏も関わっている。

【参考記事 原発避難者・関西訴訟で原告の弁論続く 】

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