WHOのテドロス事務局長は、新型コロナで影響を受けている各国政府が社会経済を日常に戻す際には安全性を重視する必要が有ると述べて、性急に通常の生活に戻すことに注意を呼び掛けた。(立岩陽一郎)
会見は8月31日にスイス・ジュネーブのWHOを本部で各国のジャーナリストとオンラインで結んで行われ、テドロス・アダノム事務局長、マイケル・ライアン健康危機担当らが対応した。
冒頭、テドロス事務局長は、「WHOは社会経済が日常へと戻ることを望んでおり、各国政府もそれに努めるべきであるが、あくまでも安全に行われる必要がある」と述べて、性急な形で社会活動や経済活動を通常通りに戻す動きに懸念を示した。
その上で、安全に日常へ戻るために重要な点として以下を挙げた。
①大規模イベントへの対策を十分に行うこと ②高齢者や基礎疾患のある人などの社会的弱者の死者数を減らすこと ③個人レベルでの三密回避など感染予防を徹底すること ④各国政府による感染者の特定、隔離、検査、ケア に加えて 自宅待機者の追跡管理をすること
また、会見では、WHOが現在進めている新型コロナのワクチンを国際共同で開発・購入する仕組みであるCOVAXファシリティについても質疑が行われた。その参加意思表示を各国が示す最終期限が8月31日になっており、WHOの担当者は、EUに加えてドイツが個別に参加を表明したことを明らかにした上で、「COVAXファシリティの目標は、ある国がワクチンを独占するのではなく、全ての国にワクチンが同時に行きわたるようにすることです。それがこのウイルスの問題を世界から無くすために必要だからです。各国によって状況は異なるかもしれませんが、特に医療従事者にワクチンは必要です。ですから、今後の進め方は議論をしながら決めていくことになるでしょう」と話し、各国の参加の仕方について柔軟に対応していく考えを示した。
日本政府は8月31日にCOVAXファシリティへの参加を表明したが、9月1日に会見した加藤勝信厚生労働大臣は、「このCOVAXファシリティの仕組みは、我が国におけるワクチン確保のための一つの手段となり得るものであり、また、国際的に公平なワクチンの普及に向けた我が国の貢献でもある、こうした意義を有するものであり、我が国も積極的に議論に参加してきました。今回意思表明を行いましたが、これは特段の拘束力はないということです」と述べて、枠組みとは別にアメリカ企業などからのワクチンの入手を進めていく考えを示している。
WHOは9月18日までに各国と協議を進めることにしている。
インファクトはFIJの新型コロナ国際ファクトチェック・プロジェクトに参加しており、この記事の作成にはFIJの大久保明日香リサーチャーが関わっています。