立憲民主党・参議院議員の蓮舫氏議員が自身のツイッターに、「インドからの入国制限をしたのは4/28になって。しかも3日だけの待機で、11日間は自宅等での待機要請。しかも、待機者の内1日300人は健康確認や連絡が取れない事態」と投稿した。しかし、インドからの入国制限は4月28日以前から行われており、投稿内容は不正確だった。(浅香玲菜・村田風佳・田中真帆・川端奈緒)
「インドからの入国制限をしたのは4/28になって。しかも3日だけの待機で、11日間は自宅等での待機要請。しかも、待機者の内1日300人は健康確認や連絡が取れない事態」
(Twitter、2021年5月30日投稿)
【不正確】インドからの入国制限は2020年5月27日から始まっている。なお、4月28日にインドが「変異株流行国」に指定され、インドから入国する際の水際対策が強化されたことは事実である。
このツイートは、5月30日に立憲民主党の蓮舫議員が自身のツイッターに投稿したものだ。
投稿された内容について、①「インドからの入国制限が始まったのは4月28日であること」、②「インドからの入国者は、3日だけの待機で、11日間は自宅等での待機要請を受けること」、③「待機者の内、1日300人は健康確認や連絡が取れないこと」の3点についてファクトチェックした。
インドからの入国制限は4月28日より以前
まず、蓮舫議員の発言のうち「インドからの入国制限をしたのは4/28になって」からというのは事実だろうか。
外務省の発表によると、4月28日、「新型コロナウイルス変異株流行国・地域」にインド・アメリカ(テネシー州、フロリダ州、ミシガン州、ミネソタ州)・ペルーが追加で指定された。
「新型コロナウイルス変異株流行国・地域」に指定されたことにより、インドから 入国した人は、検疫所が確保する宿泊施設で待機し、入国後3日目 に改めて検査を受ける。その上で陰性と判定された人は入国後14日間の残りの期間を自宅 等で待機することとなっている(「新型コロナウイルス変異株流行国・地域」に指定される以前は、単に、自宅等で入国後14日間の待機を要請されるだけだった。)。(参照)
蓮舫議員の投稿は、この新たな措置を「入国制限」と表現したものだ(後述のとおり、蓮舫議員事務所もその旨回答している)。
しかし、そもそも昨年5月27日の時点 で、日本政府はインドを上陸拒否対象地域に指定している。インドからの入国は勿論、14 日以内にインドに滞在歴がある外国人は、当分の間、特段の事情がない限り上陸を拒否 することになっている。 (参照)
つまり、インドからの「入国制限」は2020年5月27日から始まっているのであり、2021年4月28日から始まったわけではない。
4月28日にインドが「新型コロナウイルス変異株流行国・地域」に指定されたことによってとられた対策は、水際対策の強化であって、新たな入国制限ではない(なお、強化された水際対策の実施開始日は2021年5月1日)。
したがって、「インドからの入国制限をしたのは4/28になって」との蓮舫議員の投稿は誤りだ。
待機期間は正確
次に、「しかも3日だけの待機で、11日間は自宅等での待機要請」を見てみたい。
前述の通り、4月28日に強化された水際対策は、インドからの帰国者に対して「入国後、検疫所が確保する宿泊施設で待機し、3日後に検査を改めて受ける。その上で陰性と判定された人は入国後14日間の残りの期間を自宅等で待機する」という内容である。
入国後14日間から検査までの3日間を引くと、11日間なので、「しかも3日だけの待機で、11日間は自宅等での待機要請」という、水際対策強化に関する発言は正確だ。
待機者と「連絡がとれない」について
最後の「待機者の内1日300人は健康確認や連絡が取れないとの事態」との発言は正確だろうか。
投稿内の「待機者」とは、ツイートの文脈からはインドからの入国者とも解釈できる。しかし、蓮舫議員事務所に問い合わせたところ、インドだけではなく全ての国からの入国者のことをツイートでは言及しているとの回答があった。
蓮舫議員のツイートは、「インドからの入国者の内、1日300人と連絡が取れない」との印象を与えるものであるため、この点はミスリードな発言だ。
待機指示違反者の数は1日300人?
また、全ての国からの入国者のことであるとしても、「待機者の内『1日300人』」と連絡が取れないというのは正確な発言だろうか。
確かに、朝日新聞の5月10日付けの記事で報じているとおり、外国からの入国者に要請されている位置情報の報告等について、指示に従わない人が1日最大300人存在すると、厚生労働省が公表した事実は存在する。
政府が新型コロナウイルス対策として外国からの入国者に求めている位置情報の報告などをめぐり、指示に従わない人が1日最大約300人に上ることが、厚生労働省への取材でわかった。
(「朝日新聞」、2021年5月10日)
しかし、5月24日、厚生労働省は、待機指示違反者の数は1日最大300人ではなく、最大100人程度であったと訂正した。
政府が新型コロナウイルスの水際対策として入国者に求めている健康観察期間中の居場所確認を巡り、厚生労働省のビデオ通話アプリの確認ミスなどが原因で、入国者と連絡が取れない事態が相次いでいたことが判明した。厚労省は「毎日最大300人が指示に従っていない」と公表していたが実際は1日最大100人で、「入国者には問題がなかったケースもあった」と釈明した。
(「毎日新聞」、2021年5月24日)
5月24日に厚生労働省が訂正しているにもかかわらず、蓮舫議員は5月30日の投稿で、1日あたりの待機指示違反者の数は「300人」と発言している。そのため、当該発言は、ミスリーディングであるだけでなく、待機指示違反者の数について不正確でもある。
なお、問題の投稿について、蓮舫議員の事務所に質問状を送付したところ、以下の回答を得た。
以下、ご回答申し上げます。今後とも、発信には気をつけて参ります。
1. 4月28日にようやくインドを変異株流行国に指定し、入国後3日間、検疫所長が指定する場所での待機を要請したことを表現しました。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100183182.pdf
2. ご指摘の通り、他の国も含めた全体の数字であり、それを踏まえての記述です。
なお、朝日新聞と毎日新聞の二つの記事で言及されている厚生労働省の待機指示違反者についてInFactでも厚生労働省にメールと電話で問い合わせたが、記事掲載時点までに回答はなかった。
結論
蓮舫議員の問題のツイートについては、「新型コロナウイルス変異株流行国・地域」から入国する者の待機期間については正確であるものの、以下のように不正確な箇所が存在する。
すなわち、インドからの入国制限は2020年5月27日から始まっており、2021年4月28日からインドからの入国者に対して開始されたのは、水際対策の強化である。
また、「待機者の内1日300人は健康確認や連絡が取れない」という発言については、インドからの入国者について言及した印象を与えるが、実際には全ての国からの入国者に関する発言であってミスリーディングだった。さらに、待機指示違反者の数は1日最大300人ではなく、最大100人である。
したがって、このツイートには正確な部分と不正確な部分が混じっており、全体として正確性が欠如しているといえ、「不正確」であると判定する。
(冒頭写真:蓮舫議員の2021年5月30日のツイート)
※蓮舫議員は参議院議員ですが、当初、間違えて衆議院議員を記述していました。修正してお詫びさせて頂きます。